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「問題」と「課題」の違いから始めよう ― 新人プロジェクトマネージャー向け:はじめての課題管理ガイド

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| 8 min read
Author: makoto-takahashi makoto-takahashiの画像

はじめに

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  • 「なんとなくプロジェクトがうまく回っていないように思える…」
  • 「トラブル発生、でも何から手をつければいいかわからない…」
  • 「会議で“問題点は何でしょうか”って聞かれたけど、うまく言葉にできない…」

新人プロジェクトマネージャー(PM)の皆さん、こんな悩みを抱えていないでしょうか。
プロジェクトに問題はつきものです。

そんなとき、ベテランPMがよく言う「問題を課題に落とし込もう」という言葉。
しかし、「問題」と「課題」は何が違うのでしょうか。

本記事を読むことで、次のようなメリットがあります。

  • 「問題」と「課題」の違いが明確にわかります。
  • なぜ「課題」として捉えることが大切なのか、その理由が理解できます。
  • 明日から使える課題管理の基本的な進め方をステップごとに学べます。
  • あなたのプロジェクト運営がスッと前に進むきっかけとなるはずです。

一緒に「困った…」を「こうしよう」に変えるスキルを身につけましょう。

「問題」と「課題」の違いから始めよう

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プロジェクトを進めていると、「問題」と「課題」という言葉をよく耳にすることでしょう。
これらは似ているようで、実は意味が異なります。
この違いを意識することが、デキるPMへの第一歩です。

「問題」と「課題」

私が最初に「問題」と「課題」を別の概念であることを理解したきっかけは、上図を使ってとある研修で説明を受けたときです。
いまでもそのことは鮮明に覚えており、「問題」と「課題」の違いを説明する際に参考としています。

図の横軸はプロジェクトの時間経過を表し、縦軸はプロジェクトの成果量を示します。
青線はプロジェクト計画時に立てた目標の成果量つまり「あるべき姿」、緑線は現状の成果量つまり「現実の姿」です。

プロジェクトにおける「問題」の定義

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問題とは、 「あるべき姿(目標)」と「現実の姿(現状)」との差(Gap) のことです。
そのままにしておくとプロジェクトの目標達成を阻む、または阻む可能性のある「困った状況」や「望ましくない状態」を指します。

問題 = 目標 - 現状 と表現できます。

「問題」の特徴

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ネガティブな状況や出来事・兆候を指すことが多く、既に発生しているか、または発生することが見えている状態です。
例えば、以下のようなものが挙げられます。

  • 予定よりスケジュールが遅れている
  • テストでバグがたくさん出た
  • お客様からクレームが入った
  • メンバーのモチベーションが下がっている

「問題」を放置すると

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  • ただ状況を嘆くだけになりがち
  • 具体的なアクションに繋がりにくい
  • 最悪の場合、プロジェクトが停滞したり、失敗に繋がったりすることも

プロジェクトにおける「課題」の定義

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「問題」を解決するため、つまり 現実の姿をあるべき姿へ変えるためにとるべき具体的な行動(Action) のことです。
問題を引き起こしている要因を取り除くための具体的な取り組み、と言い換えることもできます。

「課題」の特徴

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解決・達成という未来志向であり、ポジティブなニュアンスがあります。
次に何をすべきか、具体的な行動や方針を明確にできます。
例えば、以下のようなものが挙げられます。

  • (スケジュール遅延という問題に対し)「遅延の原因を特定し、リカバリープランを立てる」
  • (バグによる品質低下という問題に対し)「発見されたバグの優先順位をつけ、修正計画を策定する」
  • (お客様から信頼が無くなるという問題に対し)「お客様への謝罪と対応方針を迅速に伝え、合意形成を図る。」
  • (メンバーのモチベーション低下からの離職という問題に対し)「メンバーに1on1(ワン・オン・ワン)を実施して状況を把握し、対策を検討する」

「課題」を設定するメリット

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  • 何をすべきかが明確になる。
  • チームで具体的なアクションプランを立てやすくなる。
  • プロジェクトを前に進める原動力となる。

例え話で理解度アップ

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問題: 「部屋が暑い」(目標:涼しい部屋、現状:暑い部屋。このギャップが問題です。)
課題に転換する問い:「どうすれば涼しくなるだろうか」(阻害要因:暑い空気、直射日光など)
課題/解決策の選択肢:

  • 「窓を開けて換気する」という行動をとる。
  • 「エアコンの設定温度を下げる」という対策を講じる。
  • 「扇風機を設置する」という具体策を実行する。

「部屋が暑い」という問題を認識するだけでは涼しくなりません。
しかし「エアコンをつける」という課題(取り組むべきこと)を設定することで、具体的なアクションに移せます。

なぜ「問題」と「課題」の違いを意識することが新人PMにとって大切なのか

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「問題」を認識するだけでは、ただの「困ったね」で終わってしまいます。
これではプロジェクトは前進しません。

「課題」に落とし込むことで、初めて「じゃあ、こうしよう」と具体的な一歩を踏み出せます。
それが、問題解決に向けた最初の一歩になります。

「問題だらけだ…」と悲観的になるのではなく「この問題を解決するために、どんな課題に取り組むべきか」と前向きな議論ができるようになります。
課題化された文章で話す習慣をつけると、人は行動可能な状態になります。

「課題管理」の基本ステップ ~3つのステップで進めよう~

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「問題」を「課題」に転換できたら、次はその課題をきちんと管理していくことが重要です。
これが「課題管理」です。

そもそも「課題管理」は何のために行うのでしょうか

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しかし、見つけた課題をそのまま放置していては、いつの間にか大きなトラブルに発展したり、プロジェクトの進行を妨げたりします。
課題管理とは、問題を課題として捉え直し、それを記録して解決まで導く活動です。

課題管理の目的

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  • 課題の「見える化」: 何が課題で、誰が、いつまでに、どうするのかを明確にします。
  • 対応漏れの防止: 大切な課題が忘れ去られるのを防ぎます。
  • 進捗の共有: チームみんなで状況を把握し、協力しやすくします。
  • ノウハウの蓄積: 将来同じような課題が出たときの参考にします。

課題管理の3つの基本ステップ

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ステップ1:課題を見つけて、捕まえよう(課題の特定と記録)

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  • アンテナを張りましょう。課題発見のヒント
    • 定例会議での報告、メンバーからの相談、お客様の声、自分の気づきなど、日常業務のあらゆる場面に課題のタネは潜んでいます。
    • 「あれ、おかしいな」「ちょっと困ったな」「このままだとまずいかもしれない」と感じたら、それが課題発見のチャンスです。
  • まずはメモ、簡単な「課題管理表」を作ってみましょう
    • Excelやスプレッドシート、あるいは市販の課題管理ツールなど、使いやすいもので構いません。最初はシンプルに始めましょう。
    • ポイント1:課題は具体的に、「行動可能な文」で記述する。
      • NG例:「売り上げが目標未達である」(これは問題の状態記述)
      • NG例:「売り上げを上げる」(これでは具体的に何をすべきか不明瞭)
      • OK例:「新規顧客獲得のためのキャンペーン企画を立案し、XX月XX日までに実施計画を策定する」
      • もし課題が具体的なアクションに落とし込みにくい場合は、一旦「問題」と「課題(仮)」を分けて記録できるようなリストを用意するのもひとつの手です。
    • ポイント2:必要な情報を記録する。 最低限記録したい項目は以下の通りです。
      • 管理番号: 課題にIDを振りましょう(例: KDI-001)
      • 課題発生日: いつその課題が見つかったか
      • 課題: 何が課題か、パッと見てわかるように
      • 問題: いつ、誰が、何に困っているのか、問題の背景や現状を具体的に。
      • 依頼者: その課題を報告した人、または対応を依頼した人
      • 担当者: この課題を解決するメインの人。個人名を明記しましょう。チーム名でのアサインは責任の所在が曖昧になりがちです。
      • 着手日: いつから対応を開始する(した)か
      • 完了期限: いつまでに解決する(したい)か。必ず設定しましょう。
      • 優先度: 対応の緊急性や重要度。具体例は後述します。
      • 状況: 未着手、作業中、保留、完了など
      • 中間報告/決着内容: 対応の経緯や最終的な結果を記録します。
      • 完了日: 実際に課題が完了した日付
      • 備考: その他特記事項
    • 優先度の設定例:
      • Blocker: 完了期限までにアクションを取らない場合、他チームの作業を完全に止めてしまう。
      • Critical: 完了期限までにアクションを取らない場合、自チームの作業を完全に止めてしまう(他チームへの影響は今のところ考えられない)。
      • Major: 完了期限までにアクションを取らない場合、おおよそ5%以上のタスクに遅延が生じる。
      • Minor: 完了期限までにアクションを取らない場合、おおよそ5%未満のタスクに遅延が生じる。
      • Trivial: リリース前にアクションを取らなくともプロジェクトの納期、コスト、品質に影響はないが改善したほうが良い事柄。

課題管理表サンプル

管理番号 課題発生日 課題 問題 依頼者 担当者 着手日 完了期限 優先度 状況 中間報告・解決内容 完了日 備考
KDI-001 2025/06/06 デモ環境構築遅延のリカバリー計画を策定し、実行する 定例デモで使用する環境のセットアップが、リソース不足により予定より3日遅延している。 営業部 田中 開発部 佐藤 2025/06/07 2025/06/10 Critical 作業中 鈴木さんがサポートに入り、セットアップ作業を分担。
KDI-002 2025/06/05 新機能の仕様について、関係者間でレビュー会議を実施し合意形成する A機能の動作について、開発チームと企画チームで解釈が異なっていることが判明。 企画部 山田 PM 高橋 2025/06/06 2025/06/07 Major 未着手 関係者でミーティング設定済み
KDI-003 2025/06/03 iOS最新版検証用テスト端末の追加調達(購入/レンタル)を実施する iOS最新バージョンの検証に必要な端末が1台不足しており、テスト項目の一部が実施できない。 品質管理部 木村 総務部 渡辺 2025/06/04 2025/06/09 Minor 保留 レンタル端末を手配中。6/9納品予定。
優先度に英文字を使う理由

私はBlockerCriticalMajorMinorTrivial を好んで使っています。
理由はプロジェクトマネジメントツールや表計算ソフトで課題をリストにした場合、優先度のカラムでソートした際にアルファベット順となっているため順番に並び変えることができるためです。

ステップ2:課題への対応策を練ろう(課題の分析と対応策の検討)

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  • 課題の原因を考える(深掘り)
    • その課題の背景にある原因は何か、少し深掘りしてみましょう。(例:テスト環境準備の遅延という課題の裏には、担当者の多忙、手順の不明確さ、必要な機材の不足など、様々な要因が隠れているかもしれません。)
    • 表面的な事象だけでなく、その背景にある原因を対処することで、同様の問題の再発防止に繋がります。
  • 解決へのアクションを考える
    • 具体的に何をすれば解決できるか、いくつか案を出してみましょう。
    • 一人で悩まず、先輩やチームメンバーに積極的に相談し、多様な視点から解決策を探ることが大切です。
  • 担当者と期限をしっかり決める
    • 「誰が」「いつまでに」やるのかを明確にしましょう。曖昧なままでは、課題は進展しません。
    • 担当者: 必ず個人にアサインします。実際に担当している人が変わったら、課題管理表も速やかに更新しましょう。
    • 完了期限: 必ず設定します。期限がコミットされていない課題は、永遠に解決されない可能性があります。もし期限の設定が難しい場合は、早めに上司(マネージャ)に相談し、指示を仰ぎましょう。期限未決定の課題はマネージャが預かり、期限を設定するなどのルールを設けるのも有効です。
  • 優先度と影響度で整理する
    • 全ての課題に同時に取り組むのは困難です。課題の重要度(プロジェクトへの影響の大きさ)と緊急度(対応までの時間的猶予)を考慮して、優先順位をつけましょう。
    • 「重要度×緊急度マトリクス」などを活用するのも有効です。

ステップ3:解決まで見届けよう(対応とクローズ)

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  • 進捗はどうでしょうか。定期的な確認をしましょう
    • 担当者へ任せっきりにせず、PMとして進捗を気にかけることが重要です。
    • 週に一度のミーティングで確認するなど、課題の進捗をフォローアップする仕組みを作りましょう。課題が「未解決」のまま終わらないように注意が必要です。
  • 終わったら「完了」
    • 対応策が実行され、課題が解決したことを確認します。
    • 関係者にも「解決しました」と報告し、情報を共有しましょう。
    • 課題管理表のステータスを「完了」にして、完了日を記録します。
  • 学んだことは次に活かそう(振り返り)
    • 今回の課題から何を学べたか、チームで共有できると良いでしょう。
    • 同じような課題の再発防止や、今後のプロジェクト運営の貴重なノウハウとなります。

課題管理を効果的に続けるためのコツ

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  • 完璧でなくても問題ありません。
    • まずは記録することから始めましょう。
  • 一人で抱え込まないようにしましょう。
    • 困ったらすぐに先輩やチームにSOSを出す勇気を持ちましょう。
  • 課題管理表はチームの共有財産です。
    • チームで見える場所に置こう。
    • 共有フォルダやプロジェクト管理ツールなどを活用すると良いでしょう。
  • 「そういえば、あの課題はどうなったかな…」と思い出す習慣をつけましょう。
    • 週に一度は見直す時間を作るなど、課題管理を日常業務に組み込みましょう。
  • 小さな「課題レビュータイム」を会議に取り入れるのも効果的です。

課題管理にありがちな落とし穴と回避策

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課題管理を始めたものの、うまく機能しない…そんな状況に陥らないため、よくある落とし穴とその回避策を知っておきましょう。

落とし穴1:「問題リスト」になっている

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症状: 問題や目標を記録するだけで、具体的なアクションや解決に向けた進捗がない 。
課題のタイトルや内容が「どうするか」という行動になっていない状態を指します。
単なる問題の記述や抽象的な目標に留まっているケースとして、下記のようなものがあります。

  • 「売り上げが目標未達である」(問題の記述)
  • 「売り上げを上げる」(具体的なアクションではない)

落とし穴2:「誰かがやるだろう」状態

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症状: 課題の担当者が曖昧で、誰も責任を持って対応しようとしない 。
チーム名でアサインされている、または担当者が空欄になっている。

回避策: 課題ごとにはっきりと個人名で担当者を割り当てます 。
これにより、責任感が生まれ、課題の放置や遅延が大幅に減ります 。
担当者が変更になった場合は、速やかに課題管理表を更新しましょう 。

落とし穴3:いつまでも終わらない課題

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症状: 課題に完了期限が設定されていなかったり、設定されていても守られなかったりする 。

回避策: 完了期限は必ず設定し、チーム内でその重要性を共有します 。
期限がコミットされていない課題は、優先度が下がりやすく、結果として永遠に解決されない可能性があります 。
期限設定が難しい場合は、PMやマネージャーに相談し、期限を設定してもらう、または期限設定の判断を仰ぐルールを徹底しましょう 。

落とし穴4:課題の粒度がバラバラ

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症状: 「サーバーダウン」のような大きな問題と、「〇〇のドキュメントの誤字修正」のような小さなタスクが同じように扱われている。

回避策: 大きすぎる課題は、解決可能なサイズに分解する。
逆に細かすぎる課題は、まとめて管理するか、課題管理とは別のタスクリストで管理するなどを検討する。
課題のレベル感をチームで共有しておくことも有効です。

おわりに:課題解決は、PMとしての成長の糧

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「問題」をただ嘆くだけでなく、解決すべき「課題」として捉え、具体的なアクションに繋げていくこと。
この視点の切り替えと実践が、プロジェクトを成功に導くだけでなく、PMとしてのあなたを大きく成長させてくれます。

課題管理は、時に面倒に感じるかもしれません。
しかし、これはプロジェクトを円滑に進め、予期せぬトラブルからあなた自身やチームを守るための大切なスキルです。

最初から完璧にできなくて当たり前。
まずはこの記事で紹介したステップやコツを参考に、ひとつひとつの課題と向き合い、解決していく経験を積み重ねていきましょう。

困ったときは、一人で悩まず周りの先輩やチームメンバーを頼りましょう。
この記事が、あなたのPMとしての一歩を後押しできれば幸いです。
引き続き応援しています。

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