「問題解決」と「課題達成」どう使い分ける?─新人プロジェクトマネージャー向け:“守り”と“攻め”の思考法

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はじめに

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以前の記事では、「事実」と「真実」を見極める大切さを学びましたね。
プロジェクトを進める中で、時に迷うことはありませんか。

「目の前の問題に対処すべきか」
「それとも、もっと高い目標を目指すべきか?」

悩みの本質を見極めることが、成功の分かれ道になります。
そこで今回は、状況に応じて使い分けたい2つの思考法をご紹介します。

それが 「問題解決型」と「課題達成型」 です。

Information

この記事は新人プロジェクトマネージャー向けシリーズ記事の一部です

  1. 第1回:「問題」と「課題」の違いから始めよう(課題管理入門)
  2. 第2回:探偵型マネジメント ― 真実をどう見抜くか?(思考法・観察編)
  3. 第3回:「問題」と「リスク」の違いから始める(リスク管理入門)
  4. 第4回:「問題」をSOAPで診て「課題」を処方する(問題解決編)
  5. 第5回:「問題解決型」と「課題達成型」を切り替える思考法(思考スイッチ編)

👉 初めて読む方は 第1回から読む のがおすすめです。

「問題解決」と「課題達成」:2つのアプローチを使い分ける判断基準

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この記事では、

  • 2つのアプローチの違いと判断基準
  • 各アプローチの進め方と活かし方
  • 状況に応じて切り替える「思考の軸」

を、新人プロジェクトマネージャー(PM)の向けに解説していきます。

製造業や現場改善の分野では、

  • 問題解決 = 「悪さを排除する」守りのアプローチ
  • 課題達成 = 「良さを創造する」攻めのアプローチ

と整理されることがあります。

この違いを理解すれば、今何を優先すべきかが見えてくるはずです。
では2つのアプローチを、どのように使い分けるのでしょうか。

その答えはシンプルです。「現実」と「目標」の関係がポイントです。

問題解決型と課題達成型の使い分け図

言葉だけでは分かりにくいかもしれません。
一つひとつ、詳しく見ていきましょう。

プロジェクトの「守り」を固める:問題解決型アプローチとは

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問題解決型が必要なケースとは?現場でよくある3つの状況例

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具体的な場面を想像してみましょう。

  • リリースしたばかりのサービスで、予期せぬ不具合が見つかった…
  • 計画していたコストやスケジュールに、遅れや超過が出始めた…
  • お客様からクレームの連絡が入ったり、売上目標に届かなかったり…

これらの状況は、少し胸が痛みますね。
「あるべき姿」よりも悪い、マイナスの状態です。

このマイナスを、まずゼロまで回復させます。
これが「問題解決型」アプローチの目的です。

「問題解決型」アプローチの基本ステップ:守りを固めるプロセス

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このアプローチは、探偵が事件の原因を突き止めるように進めます。
ひとつひとつつのステップを大切にしましょう。

現場対応では「3現」「3即」「3徹」という鉄則が重要です。
これらは問題を正確に捉え、迅速に対応し、確実にやりきるための考え方です。

この鉄則を意識すれば、より効果的に問題に対処できるでしょう。

ステップ やること(What) 目的(Why)
① 問題の特定 「何が起きているのか」という事実を正確に把握する。 感情や憶測に流されず客観的に見るためです。
② 原因分析 「なぜ?」「なぜ?」を繰り返し根本原因を深掘りする。 効果的な対策を打ち同じ失敗を防ぐためですね。
③ 対策立案 応急処置と恒久対策を組み合わせて考えてみましょう。 その場しのぎで終わらせず問題を断ち切るため。
④ 実行と検証 対策を実行し効果をしっかりモニタリングします。 本当に問題が解決したのか最後まで見届けます。
【少し補足です】3現・3即・3徹とは
  • 3現:現場・現物・現実。問題を正しく理解するために重要です。
  • 3即:即時・即座・即応。迅速な対応を促します。
  • 3徹:徹頭・徹尾・徹底。最後までやりきる姿勢を表します。

プロジェクトを「攻め」に転じる:課題達成型アプローチとは

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課題達成型が活きる場面とは?未来志向でプロジェクトを伸ばす方法

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例えば、以下のような挑戦です。

  • まだ世の中にない、新しいサービスや機能を立ち上げる!
  • チームの生産性を、もっと劇的に向上させる仕組み作りに挑戦する!
  • PMとして、自分自身のスキルアップやキャリアの目標を達成する!

このような挑戦では、「QCDSME」という観点でゴールを捉えましょう。
これにより、多角的にプロジェクトの成果を評価できます。

課題達成型では「どんな価値を創るか」を定義する際に役立ちます。
これらの指標があれば、チームで合意形成しやすくなります。

【少し補足です】QCDSMEとは

品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)、安全(Safety)、士気(Morale)、環境(Environment)の頭文字を取ったものです。
これらをバランスよく管理し、プロジェクトの成功を評価します。

「課題達成型」アプローチの基本ステップ:攻めを加速するプロセス

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課題達成型アプローチ

課題達成型アプローチでは、現状が目標通りあることに満足せず、目標を今より高めることから始めます。
上図のように、目標を高めることで意図的に目標と現状との差(ギャップ)を生み出します。
このギャップこそが、プロジェクトを次のレベルへ押し上げる「課題」となるのです。

ステップ やること(What) 目的(Why)
① 目標設定 「いつまでに、何を、どうするか」という具体的なゴール(SMARTなど)を定める。 チーム全体の認識を揃え、同じ方向を目指すためです。
② 現状把握 設定した目標と現状とのギャップ(=課題)を明らかにする。 何に取り組むべきかを明確にするためですね。
③ 計画立案 ゴールへの道筋をマイルストーンやタスクに分けて組み立てる。 実現可能な計画で、着実に前進するためです。
④ 実行と改善 計画を実行し進捗を見ながら、より良いやり方へ改善する。 成功率を高め、確実にゴールへ近づくためです。
【少し補足です】SMARTとは

具体的(Specific)、測定可能(Measurable)、達成可能(Achievable)、関連性(Relevant)、期限付き(Time-bound)の5つの要素で構成される目標設定の基準です。

まとめ:思考のギアを切り替え、新人PMとして成長しよう

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  • 問題解決型は、マイナスをゼロに戻す「守り」のアプローチ。
  • 課題達成型は、ゼロからプラスを創る「攻め」のアプローチ。

この2つは優劣ではなく、車のギアのように使い分けるものです。
プロジェクトでトラブルが起きたら「問題解決型」で冷静に立て直し、安定してきたら「課題達成型」で未来を描きましょう。

しなやかに思考を切り替えられるPMは、チームにとって信頼できる存在です。

実践のヒント:「いま自分が向き合っているのは何か?」

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現場で迷ったときは、自分に問いかけてみましょう。

  • 「これは“あるべき姿”とのギャップを埋める作業か?」
  • 「それとも、“ありたい姿”への挑戦か?」

この問いかけを意識すれば、次に踏み出す一歩を明確にしてくれます。


これまで5回にわたり、新人PM向けに連載してきました。
「問題」と「課題」の違いや、状況判断、対処・達成の思考法などを解説してきました。

このシリーズは今回で一区切りです。
お読みいただき、ありがとうございました。

次回以降は、新人PM向けを少し離れます。
より複雑なプロジェクト課題に挑む、PM全般向けの内容をご紹介します。
ぜひ、楽しみにしていてくださいね。

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