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Karpenterのオートスケールを試してみました

| 26 min read
Author: noboru-kudo noboru-kudoの画像

2021/11/29に、AWSはKarpenterというKubernetesのオートスケーラーをGAリリースしました。

これは有料のサービスではなく、OSSとしての提供です。現在はAWSのみに対応していますが、構造上はそれ以外のクラウドプロバイダーでも使えるものになっています。

Kubernetesには、既にNodeレベルのオートスケーラーとしてCluster Autoscalerという仕組みがあります。
AWS EKSの場合は、Auto Scaling Group(ASG)の希望のサイズ(Desired Number)を増減させることで、Node(EC2)のスケールアウト・ダウンを実現します。

KarpenterはASG経由ではなく、直接NodeとなるEC2インスタンスをプロビジョニングします。
これにより、現在のCluster Autoscalerと比較して、スケール速度の向上や、ワークロードに応じたインスタンスタイプ選択等、柔軟な指定が可能となっています。

今回はこのKarpenterを使ってNodeのスケールアウト/ダウンを試してみました。

Karpenterインストール

#

現時点で最新の0.6.1をセットアップしました。
Karpenterのインストールは、公式ドキュメントに記載されている通りに実施すれば問題ありませんでした。

上記はeksctlですがTerraformで構築したEKSでの利用も可能です。

今回は、以下のeksctl設定でクラスタ環境を作成しました。

apiVersion: eksctl.io/v1alpha5
kind: ClusterConfig
metadata:
  name: mz-karpenter
  region: ap-northeast-1
  version: "1.21"
  # ProvisionerのsubnetSelector/securityGroupSelectorで使う
  tags:
    karpenter.sh/discovery: mz-karpenter
managedNodeGroups:
  - name: minimum
    # cpu:2 memory:8Gi
    instanceType: m5.large
    desiredCapacity: 1
iam:
  withOIDC: true

KarpenterのProvisionerがサブネット、セキュリティグループを探せるようにtags.karpenter.sh/discoveryを指定しています。
これは、後でProvisionerのセットアップ時に使います。値は他と衝突しなければ任意で構いません。

また、NodeGroupは最小構成(m5.large1台)として、これを超える部分はKarpenterのオートースケールに委ねます。

初期状態のNodeは、以下のようになります。

kubectl get node
NAME                                               STATUS   ROLES    AGE   VERSION
ip-192-168-88-26.ap-northeast-1.compute.internal   Ready    <none>   24m   v1.21.5-eks-9017834

eksctlでASGは1台のみの構成にしましたので、Kubernetes上でも、1Nodeのみが認識されています。
Nodeの詳細を確認してみます。

kubectl describe node <node-name>

以下抜粋です。

Name:               ip-192-168-88-26.ap-northeast-1.compute.internal
(省略)
Non-terminated Pods:          (6 in total)
  Namespace                   Name                                     CPU Requests  CPU Limits  Memory Requests  Memory Limits  Age
  ---------                   ----                                     ------------  ----------  ---------------  -------------  ---
  karpenter                   karpenter-controller-57f49d7db7-fmpmh    1 (51%)       1 (51%)     1Gi (14%)        1Gi (14%)      20m
  karpenter                   karpenter-webhook-6cdfbc74c8-89xxw       100m (5%)     100m (5%)   50Mi (0%)        50Mi (0%)      20m
  kube-system                 aws-node-p74z4                           25m (1%)      0 (0%)      0 (0%)           0 (0%)         26m
  kube-system                 coredns-76f4967988-5w222                 100m (5%)     0 (0%)      70Mi (0%)        170Mi (2%)     39m
  kube-system                 coredns-76f4967988-7hjbw                 100m (5%)     0 (0%)      70Mi (0%)        170Mi (2%)     39m
  kube-system                 kube-proxy-tfp4b                         100m (5%)     0 (0%)      0 (0%)           0 (0%)         26m
Allocated resources:
  (Total limits may be over 100 percent, i.e., overcommitted.)
  Resource                    Requests      Limits
  --------                    --------      ------
  cpu                         1425m (73%)   1100m (56%)
  memory                      1214Mi (17%)  1414Mi (19%)
  ephemeral-storage           0 (0%)        0 (0%)
  hugepages-1Gi               0 (0%)        0 (0%)
  hugepages-2Mi               0 (0%)        0 (0%)
  attachable-volumes-aws-ebs  0             0
(省略)

Control PlaneとKarpenterのPodで、CPUは1.4コアと既に73%が使用中の状態です。

Provisioner作成

#

Karpenterを動作するためには、Provisionerカスタムリソースを作成する必要があります。
ここでは、以下の構成でマニフェストを作成しました(provisioner.yaml)。

apiVersion: karpenter.sh/v1alpha5
kind: Provisioner
metadata:
  name: default
spec:
  requirements:
    - key: karpenter.sh/capacity-type
      operator: In
      # Spotインスタンスが優先される
      values: ["spot", "on-demand"]
  # クラスタ全体の制限。Podのlimitで誤った指定した場合の過度なインスタンス生成を抑制
  limits:
    resources:
      cpu: 100
  # AWS Providerの設定
  provider:
    subnetSelector:
      karpenter.sh/discovery: mz-karpenter
    securityGroupSelector:
      karpenter.sh/discovery: mz-karpenter
  # 作成したNodeでPodが30秒起動してなければ削除
  ttlSecondsAfterEmpty: 30
  # Nodeの有効期限(30分)
  ttlSecondsUntilExpired: 1800

requirementsには、Karpenterが作成するNode(EC2)の条件を指定します。今回は安価に利用可能なスポットインスタンスの作成を許可するようにしました。
これ以外にも、EC2のインスタンスタイプやAZを限定する等の指定も可能です。指定可能なオプションの詳細は、こちらをご確認ください。

providerには、EC2インスタンスを起動する際のサブネットやセキュリティグループを指定します。
ここでは、クラスタ作成時にeksctlで指定したタグを設定しています。
AWSがサポートされるようになると、ここにクラウドプロバイダー固有の設定が入ると思います。

ttlSecondsAfterEmpty/ttlSecondsUntilExpiredはNodeのスケールダウンに関する設定です。

ttlSecondsAfterEmptyは、Node内にPodが起動していない場合のタイムアウト値です。ここでは、Podがない場合には30秒経過後に対象Nodeを終了するようにしました。

ttlSecondsUntilExpiredを指定すると、Podの起動有無に関係なく、この時間を超えるとNodeは削除されます。
ここで削除されたPodを収容する空き容量が他のNodeにない場合は、結果的にKarpenterが必要なインスタンスタイプを再計算して、Nodeが再作成されます(つまり再スケールアウト)。
今回は、スケールダウンを確認するために、30分とかなり短い値を設定しました。
この指定だと、頻繁にPodが再スケジュールされることになるため、実運用では日単位で指定した方が良いかと思います。
とはいえ、これを設定することで、現在のクラスタ状態に見合ったインスタンスタイプで定期的に見直しできます。
一時的なバーストによるオーバースペックのNode(=高コスト)をいつまでも残しておかないよう、一定のサイクルで更新するようにしておいた方が良さそうです。

スケールダウンの詳細はこちらを参照してください。

この構成でProvisionerを作成しておきます。

kubectl apply -f provisioner.yaml

サンプルPodデプロイ

#

今回は、サンプルアプリとしてalpineコンテナでスリープするだけのものをデプロイします。
以下のマニフェスト(app.yaml)を用意します。

kind: Deployment
apiVersion: apps/v1
metadata:
  name: app
  labels:
    app.kubernetes.io/name: app
spec:
  replicas: 1
  selector:
    matchLabels:
      app.kubernetes.io/name: app
  template:
    metadata:
      name: app
      labels:
        app.kubernetes.io/name: app
    spec:
      containers:
        - name: app
          image: alpine:latest
          command: [sh, -c, "sleep infinity"]
          resources:
            requests:
              cpu: 500m
              memory: 512Mi

初期状態はレプリカ数を1としました。
また、コンテナのスペックはcpu: 500, memory: 512Miとしています(もちろん必要以上に大きな値です)。
これは現状のクラスタ構成にギリギリ収まる範囲です。

サンプルアプリをデプロイします。

kubectl apply -f app.yaml

Podの状態を確認します。

kubectl get pod -o wide

以下必要なフィールドを抜粋して掲載します(以降同様)。

NAME                   READY   STATUS    RESTARTS   AGE   NODE
app-6ffb6f8dcd-2kn9r   1/1     Running   0          10s   ip-192-168-88-26.ap-northeast-1.compute.internal

期待通りに、最小構成の初期NodeでPodが起動しました。ここではまだKarpenterは動作していません。

スケールアウト

#

それでは、サンプルアプリをスケールアウトさせて、Karpenterの動きを見ていきます。

その前に、別のターミナルでNodeの状態を常時ウォッチしておきます。

kubectl get node -w

まずは、レプリカ数を5に上げてみます。

kubectl scale deploy app --replicas 5

Podは以下の状態となりました。

kubectl get pod --sort-by .status.startTime
NAME                   READY   STATUS    RESTARTS   AGE
app-6ffb6f8dcd-zr8dn   0/1     Pending   0          6s
app-6ffb6f8dcd-lzgc5   0/1     Pending   0          6s
app-6ffb6f8dcd-cjfmg   0/1     Pending   0          6s
app-6ffb6f8dcd-cck7v   0/1     Pending   0          6s
app-6ffb6f8dcd-2kn9r   1/1     Running   0          46s

追加となった4つのPodはPending状態となっています。
Podのイベントを確認すると、以下のようになっています。

Events:
  Type     Reason            Age                From               Message
  ----     ------            ----               ----               -------
  Warning  FailedScheduling  24s (x2 over 26s)  default-scheduler  0/1 nodes are available: 1 Insufficient cpu.

このPodを起動するためのキャパシティ(CPU)が、初期Nodeにないということが分かります。

この状態になると、すぐにKarpenterが検知して、新しいNodeのプロビジョニングを開始します。
ウォッチしていたNodeの状態を確認します。

ip-192-168-122-149.ap-northeast-1.compute.internal   Unknown   <none>   0s     
ip-192-168-122-149.ap-northeast-1.compute.internal   Unknown   <none>   54s    
ip-192-168-122-149.ap-northeast-1.compute.internal   NotReady   <none>   55s    v1.21.5-eks-9017834
ip-192-168-122-149.ap-northeast-1.compute.internal   Ready      <none>   84s    v1.21.5-eks-9017834

新たなNode(ip-192-168-122-149...)が起動している様子が分かります。
PodがどのNodeに配置されたかを確認してみます。

kubectl get pod -o wide --sort-by .status.startTime
NAME                   READY   STATUS    RESTARTS   AGE     NODE
app-6ffb6f8dcd-2kn9r   1/1     Running   0          3m      ip-192-168-88-26.ap-northeast-1.compute.internal  
app-6ffb6f8dcd-cck7v   1/1     Running   0          2m20s   ip-192-168-122-149.ap-northeast-1.compute.internal
app-6ffb6f8dcd-cjfmg   1/1     Running   0          2m20s   ip-192-168-122-149.ap-northeast-1.compute.internal
app-6ffb6f8dcd-lzgc5   1/1     Running   0          2m20s   ip-192-168-122-149.ap-northeast-1.compute.internal
app-6ffb6f8dcd-zr8dn   1/1     Running   0          2m20s   ip-192-168-122-149.ap-northeast-1.compute.internal

NODE列から、Karpenterによって作成された新しいNode(ip-192-168-122-149...)でPodが実行中となっています。
ここでは表現できませんでしたが、Nodeが作成されると(Ready前でも)、PodはすぐにそのNodeにスケジューリングされました(CotainerCreatingステータスに変化)。

Karpenterによって作成されたNodeのスペックを確認します。

kubectl describe node <new-node-name>

以下抜粋です。

Name:               ip-192-168-122-149.ap-northeast-1.compute.internal
Roles:              <none>
Labels:             beta.kubernetes.io/arch=amd64
                    beta.kubernetes.io/instance-type=c4.xlarge -> EC2のインスタンスタイプ
                    beta.kubernetes.io/os=linux
                    failure-domain.beta.kubernetes.io/region=ap-northeast-1
                    failure-domain.beta.kubernetes.io/zone=ap-northeast-1a
                    karpenter.sh/capacity-type=spot -> スポットインスタンス
                    karpenter.sh/provisioner-name=default
                    kubernetes.io/arch=amd64
                    kubernetes.io/hostname=ip-192-168-122-149.ap-northeast-1.compute.internal
                    kubernetes.io/os=linux
                    node.kubernetes.io/instance-type=c4.xlarge
                    topology.kubernetes.io/region=ap-northeast-1
                    topology.kubernetes.io/zone=ap-northeast-1a

今回はPodのスペック(resources.requests)からc4.xlargeのEC2が最適と判定されたようです[1]
また、スポットインスタンスとして作成されて、オンデマンドインスタンスと比べて費用的にもお得になりました。

以降、このNodeをNode1と表記します。
現在は以下のイメージの状態になっています。

karpenter1

さらにスケールアウト

#

もっとPodを増やしてみます。今回は一気に20レプリカまで増やしてみます。

kubectl scale deploy app --replicas 20

Nodeの状態ウォッチしていたターミナルを見ると、先程同様に新たなNodeが作成されていることが分かります。

ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal    Unknown   <none>   0s     
ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal    NotReady   <none>   64s    
ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal    NotReady   <none>   68s    
ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal    NotReady   <none>   68s    v1.21.5-eks-9017834
ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal    NotReady   <none>   74s    v1.21.5-eks-9017834
ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal    Ready      <none>   88s    v1.21.5-eks-9017834

全てのレプリカを収容するための、3つ目のNode(ip-192-168-162-96...)が作成されました。
こちらもNodeのスペックを確認してみます。

Name:               ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal
Roles:              <none>
Labels:             beta.kubernetes.io/arch=amd64
                    beta.kubernetes.io/instance-type=t3a.2xlarge -> EC2のインスタンスタイプ
                    beta.kubernetes.io/os=linux
                    failure-domain.beta.kubernetes.io/region=ap-northeast-1
                    failure-domain.beta.kubernetes.io/zone=ap-northeast-1d
                    karpenter.sh/capacity-type=spot
                    karpenter.sh/provisioner-name=default
                    kubernetes.io/arch=amd64
                    kubernetes.io/hostname=ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal
                    kubernetes.io/os=linux
                    node.kubernetes.io/instance-type=t3a.2xlarge
                    topology.kubernetes.io/region=ap-northeast-1
                    topology.kubernetes.io/zone=ap-northeast-1d
(省略)

今度はt3a.2xlargeのインスタンスタイプと、先程よりも高スペックで作成されました。
より多くのレプリカを収容する最適サイズとして、Karpenterがこれを割り出しているようです。

以降このNodeをNode2と表記します。

Podの配置状況も確認してみます。

NAME                   READY   STATUS    RESTARTS   AGE     NODE                                              
app-6ffb6f8dcd-2kn9r   1/1     Running   0          13m     ip-192-168-88-26.ap-northeast-1.compute.internal
↓ Node1の既存Pod
app-6ffb6f8dcd-cck7v   1/1     Running   0          13m     ip-192-168-122-149.ap-northeast-1.compute.internal
app-6ffb6f8dcd-lzgc5   1/1     Running   0          13m     ip-192-168-122-149.ap-northeast-1.compute.internal
app-6ffb6f8dcd-cjfmg   1/1     Running   0          13m     ip-192-168-122-149.ap-northeast-1.compute.internal
app-6ffb6f8dcd-zr8dn   1/1     Running   0          13m     ip-192-168-122-149.ap-northeast-1.compute.internal
↓ Node1の新規Pod
app-6ffb6f8dcd-lqjkq   1/1     Running   0          2m53s   ip-192-168-122-149.ap-northeast-1.compute.internal
app-6ffb6f8dcd-wsc6q   1/1     Running   0          2m53s   ip-192-168-122-149.ap-northeast-1.compute.internal
app-6ffb6f8dcd-9xxc7   1/1     Running   0          2m53s   ip-192-168-122-149.ap-northeast-1.compute.internal
↓ Node2(Node1で収容できなかったPod)
app-6ffb6f8dcd-lv9p8   1/1     Running   0          2m53s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal 
app-6ffb6f8dcd-dzph7   1/1     Running   0          2m53s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal 
app-6ffb6f8dcd-6hm5h   1/1     Running   0          2m53s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal 
app-6ffb6f8dcd-cvtwb   1/1     Running   0          2m53s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal 
app-6ffb6f8dcd-7f64h   1/1     Running   0          2m53s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal 
app-6ffb6f8dcd-2mbrz   1/1     Running   0          2m53s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal 
app-6ffb6f8dcd-qpkn2   1/1     Running   0          2m53s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal 
app-6ffb6f8dcd-tgrnj   1/1     Running   0          2m53s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal 
app-6ffb6f8dcd-9bkfn   1/1     Running   0          2m53s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal 
app-6ffb6f8dcd-x2pps   1/1     Running   0          2m53s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal 
app-6ffb6f8dcd-z9rxr   1/1     Running   0          2m53s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal 
app-6ffb6f8dcd-jdjfg   1/1     Running   0          2m53s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal 

新たに追加となった15レプリカがNode1, Node2にそれぞれスケジューリングされていることが分かります。

これで以下の状態になりました。

karpenter2

スケールダウン

#

今度は段階的にスケールダウンしてみます。
まずは10レプリカまで下げます。

# 20 => 10
kubectl scale deploy app --replicas 10

Podの状態を確認してみます。

NAME                   READY   STATUS        RESTARTS   AGE     NODE
app-6ffb6f8dcd-2kn9r   1/1     Running       0          15m     ip-192-168-88-26.ap-northeast-1.compute.internal
↓ Node1  
app-6ffb6f8dcd-cck7v   1/1     Running       0          14m     ip-192-168-122-149.ap-northeast-1.compute.internal
app-6ffb6f8dcd-lzgc5   1/1     Running       0          14m     ip-192-168-122-149.ap-northeast-1.compute.internal
app-6ffb6f8dcd-cjfmg   1/1     Running       0          14m     ip-192-168-122-149.ap-northeast-1.compute.internal
app-6ffb6f8dcd-zr8dn   1/1     Running       0          14m     ip-192-168-122-149.ap-northeast-1.compute.internal
app-6ffb6f8dcd-lqjkq   1/1     Running       0          4m43s   ip-192-168-122-149.ap-northeast-1.compute.internal
app-6ffb6f8dcd-wsc6q   1/1     Running       0          4m43s   ip-192-168-122-149.ap-northeast-1.compute.internal
app-6ffb6f8dcd-9xxc7   1/1     Running       0          4m43s   ip-192-168-122-149.ap-northeast-1.compute.internal
↓ Node2
app-6ffb6f8dcd-lv9p8   1/1     Terminating   0          4m43s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal 
app-6ffb6f8dcd-dzph7   1/1     Terminating   0          4m43s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal 
app-6ffb6f8dcd-6hm5h   1/1     Running       0          4m43s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal 
app-6ffb6f8dcd-cvtwb   1/1     Terminating   0          4m43s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal 
app-6ffb6f8dcd-7f64h   1/1     Running       0          4m43s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal 
app-6ffb6f8dcd-2mbrz   1/1     Terminating   0          4m43s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal 
app-6ffb6f8dcd-qpkn2   1/1     Terminating   0          4m43s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal 
app-6ffb6f8dcd-tgrnj   1/1     Terminating   0          4m43s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal 
app-6ffb6f8dcd-9bkfn   1/1     Terminating   0          4m43s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal 
app-6ffb6f8dcd-x2pps   1/1     Terminating   0          4m43s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal 
app-6ffb6f8dcd-z9rxr   1/1     Terminating   0          4m43s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal 
app-6ffb6f8dcd-jdjfg   1/1     Terminating   0          4m43s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal 

スケールダウンによって、Node2に配置されたPodがTerminatingとなりシャットダウンされました。
この段階では、まだ全てのNodeにPodが起動している状態ですので、Nodeのスケールダウンは発生しません。

ただ、先程KarpenterのProvisionerの設定でttlSecondsUntilExpiredを30分と指定しました。
このため、30分経過するとNodeの更新が実施されます。

まず、Node1の有効期限が切れます。

NAME                                                STATUS   ROLES    AGE   VERSION
ip-192-168-122-149.ap-northeast-1.compute.internal   Ready    <none>   30m    v1.21.5-eks-9017834
ip-192-168-122-149.ap-northeast-1.compute.internal   Ready,SchedulingDisabled   <none>   30m    v1.21.5-eks-9017834
ip-192-168-122-149.ap-northeast-1.compute.internal   Ready,SchedulingDisabled   <none>   30m    v1.21.5-eks-9017834
ip-192-168-122-149.ap-northeast-1.compute.internal   Ready,SchedulingDisabled   <none>   30m    v1.21.5-eks-9017834

ステータスの遷移だけだとちょっと分かりにくいですが、KarpenterがNode1をシャットダウンしました。
ただ、Node2の方は、2Podのみがデプロイされている状態で余裕があります。新たなNode作成は不要です。
Node1にデプロイされていた7つのPodは、このNode2の方に再配置されました。

NAME                   READY   STATUS        RESTARTS   AGE   NODE
app-6ffb6f8dcd-2kn9r   1/1     Running       0          31m   ip-192-168-88-26.ap-northeast-1.compute.internal
↓ Node1のPodはシャットダウン
app-6ffb6f8dcd-cck7v   0/1     Terminating   0          31m   ip-192-168-122-149.ap-northeast-1.compute.internal
app-6ffb6f8dcd-lzgc5   1/1     Terminating   0          31m   ip-192-168-122-149.ap-northeast-1.compute.internal
app-6ffb6f8dcd-cjfmg   0/1     Terminating   0          31m   ip-192-168-122-149.ap-northeast-1.compute.internal
app-6ffb6f8dcd-zr8dn   0/1     Terminating   0          31m   ip-192-168-122-149.ap-northeast-1.compute.internal
app-6ffb6f8dcd-9xxc7   0/1     Terminating   0          20m   ip-192-168-122-149.ap-northeast-1.compute.internal
app-6ffb6f8dcd-wsc6q   0/1     Terminating   0          20m   ip-192-168-122-149.ap-northeast-1.compute.internal
app-6ffb6f8dcd-lqjkq   0/1     Terminating   0          20m   ip-192-168-122-149.ap-northeast-1.compute.internal
↓ Node2
app-6ffb6f8dcd-6hm5h   1/1     Running       0          20m   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal
app-6ffb6f8dcd-7f64h   1/1     Running       0          20m   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal
↓ 以下再スケジューリング(Node1 -> Node2)
app-6ffb6f8dcd-lfwf6   1/1     Running       0          61s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal
app-6ffb6f8dcd-cpdx8   1/1     Running       0          61s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal
app-6ffb6f8dcd-7ggz7   1/1     Running       0          61s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal
app-6ffb6f8dcd-pbrxn   1/1     Running       0          61s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal
app-6ffb6f8dcd-vlh8q   1/1     Running       0          61s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal
app-6ffb6f8dcd-9xzbh   1/1     Running       0          61s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal
app-6ffb6f8dcd-99qv5   1/1     Running       0          61s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal

Karpenterのスケールダウンによって、以下の状態となりました。

karpenter3

さらにスケールダウン

#

今度はさらに5レプリカまでスケールダウンさせます。

# 10 => 5 
kubectl scale deploy app --replicas 5

これだけではNodeに変動はありません。

NAME                   READY   STATUS        RESTARTS   AGE     NODE                                            
app-6ffb6f8dcd-2kn9r   1/1     Running       0          33m     ip-192-168-88-26.ap-northeast-1.compute.internal
↓ Node1の5Podが終了
app-6ffb6f8dcd-6hm5h   1/1     Running       0          22m     ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal
app-6ffb6f8dcd-7f64h   1/1     Running       0          22m     ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal
app-6ffb6f8dcd-7ggz7   1/1     Terminating   0          2m32s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal
app-6ffb6f8dcd-99qv5   1/1     Running       0          2m32s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal
app-6ffb6f8dcd-9xzbh   1/1     Terminating   0          2m32s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal
app-6ffb6f8dcd-cpdx8   1/1     Terminating   0          2m32s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal
app-6ffb6f8dcd-lfwf6   1/1     Terminating   0          2m32s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal
app-6ffb6f8dcd-pbrxn   1/1     Running       0          2m32s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal
app-6ffb6f8dcd-vlh8q   1/1     Terminating   0          2m32s   ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal

とはいえ、現在Node2は4Podしかデプロイされておらず、オーバースペックの状態です。
Nodeの状態は、以下のようになっています。

Name:               ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal
Roles:              <none>
Labels:             beta.kubernetes.io/arch=amd64
                    beta.kubernetes.io/instance-type=t3a.2xlarge
(省略)
Allocated resources:
  (Total limits may be over 100 percent, i.e., overcommitted.)
  Resource                    Requests     Limits
  --------                    --------     ------
  cpu                         2125m (26%)  0 (0%)
  memory                      2Gi (6%)     0 (0%)
  ephemeral-storage           0 (0%)       0 (0%)
  hugepages-1Gi               0 (0%)       0 (0%)
  hugepages-2Mi               0 (0%)       0 (0%)
  attachable-volumes-aws-ebs  0            0
(省略)

CPUが26%しか使われておらず、リソース利用効率が悪い状態です。
ここでも有効期限(ttlSecondsUntilExpired)が効くはずです。しばらく待つとNode2も有効期限を迎えます。

NAME                                                STATUS   ROLES    AGE    VERSION
ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal   Ready    <none>   30m    v1.21.5-eks-9017834
ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal   Ready,SchedulingDisabled   <none>   30m    v1.21.5-eks-9017834
ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal   Ready,SchedulingDisabled   <none>   30m    v1.21.5-eks-9017834
ip-192-168-124-93.ap-northeast-1.compute.internal   Unknown                    <none>   0s     
ip-192-168-124-93.ap-northeast-1.compute.internal   Unknown                    <none>   0s     
ip-192-168-124-93.ap-northeast-1.compute.internal   Unknown                    <none>   0s     
ip-192-168-162-96.ap-northeast-1.compute.internal   Ready,SchedulingDisabled   <none>   30m    v1.21.5-eks-9017834
ip-192-168-124-93.ap-northeast-1.compute.internal   Unknown                    <none>   60s    
ip-192-168-124-93.ap-northeast-1.compute.internal   NotReady                   <none>   60s    v1.21.5-eks-9017834
ip-192-168-124-93.ap-northeast-1.compute.internal   NotReady                   <none>   60s    v1.21.5-eks-9017834
ip-192-168-124-93.ap-northeast-1.compute.internal   NotReady                   <none>   61s    v1.21.5-eks-9017834
ip-192-168-124-93.ap-northeast-1.compute.internal   Ready                      <none>   90s    v1.21.5-eks-9017834

今回Karpenterは削除だけでなく、スケジュールできなくなったPodのために、新たなNode(ip-192-168-124-93...)を作成していることが分かります。
この新しいNodeのスペックとCPU利用率は以下になっていました。

Name:               ip-192-168-124-93.ap-northeast-1.compute.internal
Roles:              <none>
Labels:             beta.kubernetes.io/arch=amd64
                    beta.kubernetes.io/instance-type=c4.xlarge
(省略)
Allocated resources:
  (Total limits may be over 100 percent, i.e., overcommitted.)
  Resource                    Requests     Limits
  --------                    --------     ------
  cpu                         2125m (54%)  0 (0%)
  memory                      2Gi (31%)    0 (0%)
  ephemeral-storage           0 (0%)       0 (0%)
  hugepages-1Gi               0 (0%)       0 (0%)
  hugepages-2Mi               0 (0%)       0 (0%)
  attachable-volumes-aws-ebs  0            0

今回はインスタンスタイプc4.xlargeと、先程よりワンランク下のNodeが作成されていました。
CPU使用率も54%と先程のオーバースペック状態が緩和され、身の丈にあったNodeのスペックになりました。

karpenter5

ゼロスケール

#

最後にゼロスケールしてみます。

kubectl scale deploy app --replicas 0

全てのPodが削除され、Karpenterが追加したNodeはもう不要になっています。
ここでProvisionerのttlSecondsAfterEmpty指定が効くはずです。こちらは30秒に指定しましたので、Podが削除されるとすぐにNodeが削除されます。

ip-192-168-124-93.ap-northeast-1.compute.internal   Ready                      <none>   7m50s   v1.21.5-eks-9017834
ip-192-168-124-93.ap-northeast-1.compute.internal   Ready,SchedulingDisabled   <none>   7m50s   v1.21.5-eks-9017834

最終的に、Nodeは以下のようになりました。

NAME                                               STATUS   ROLES    AGE    VERSION
ip-192-168-88-26.ap-northeast-1.compute.internal   Ready    <none>   175m   v1.21.5-eks-9017834

全てのPodが起動していないので、Karpenterは不要になったNode(EC2)を全てシャットダウンして、初期状態に戻りました。

まとめ

#

Karpenterによって、柔軟で無駄のないオートースケール環境が構築できそうです。
今回はkubectl scaleを使い、手動でPod数を増減させましたが、HPA(Horizontal Pod Autoscaler)と組み合わせることで、クラスタ利用状況に応じて自律的にオートースケールできるでしょう。
既にEKSでCluster Autoscalerを利用している場合は、こちらへの乗り換えを検討する価値がありそうです。

AWS以外のクラウドプロバイダーでもKarpenterが使えるようなってくると、既存のCluster AutoscalerもKarpenterベースとなっていく可能性もあるかもしれませんね。


  1. 余談ですが、KarpenterではFargateと同じく、CRIはDockerではなくcontainerdを利用するようになっていました。 ↩︎

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