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MicroProfileってなにそれ? - MicroProfileの登場

| 5 min read
Author: toshio-ogiwara toshio-ogiwaraの画像

連載初回となる今回はなにはともあれまずはMicroProfileそのものについて、概要から説明していきたいと思います。

Javaのエンタープライズの標準仕様はなんですか?と問われたら、みなさんはなにを頭に浮かべるでしょうか?そもそも「Javaのエンタープライズ」ってなんだよ?とは思いつつも、多くの方はJava EEもしくはJakarta EE、そしてもしかしたらJ2EEと言った単語を浮かべるのではないかと思いますが、いずれも正解です!

MicroProfileを語る上で標準であるJakarta EE(Java EE/J2EE)は切っても切り離せない関係にあります。ですので、MicroProfileの説明に行く前にまずは軽くJava EEのおさらいから始めたいと思います。

連載の紹介

豆蔵デベロッパーサイトではMicroProfileをテーマに「逆張りのMicroProfile ~ Helidonで始めるマイクロサービスへの一歩 ~」を連載しています。他の記事も是非どうぞ!

Java EEの登場から今

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Java EEは1999年12月にエンタープライズ向けのエディションとして当初はJ2EEとして世にでました。エンタープライズとは「業務システムを作る上で必要」となるWeb UIやDBアクセス、システム間連携、セキュリティなどの仕様をまとめたものとなります。このエンタープライズエディションは登場以来、APIの洗練化やRESTやJSONサポートなど、その中身は時代とともに少しずつ変わってきましたが、中身以外のところで大きな変化が2回ありました。

1つはJ2EEからJava EEへのエディション名の変更。J2SEがJava SEへ変わったのに伴い2006年リリースのJava EE 5からJ2EEの名称がJava EEへ変更されました。この際の変更はこの名称変更のみで、API仕様や仕様策定プロセス等に対する実質的な変更はなく、実に平穏なものでした。

そして次の大きな変更がJakarta EEへの変更となります。それまでJava EEに関する権利関係はOracleが保有していましたが、Javaのエンタープライズ分野におけるより一層の発展と円滑な仕様策定を目指し、Java EEの権利関係が非営利団体であるEclipse Foundationに寄贈、移管されました[1]。また、これによりエディション名もJava EEからJakarta EE 8へ一新[2]され、この名称以外にも次にあげる大きな変更がありました。

  • Jakarta EEとしての成果物にはjavax.*のパッケージは利用できなくなったため、既存のAPIも含め、パッケージ名はjakarta.*へ変更する[3]
  • 仕様を策定、およびそれを管理する組織がOracleを中心としたJCPからオープンな非営利団体であるEclipse Foundationへ移管された

MicroProfileの背景

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MicroProfileを一言で説明することは難しいため、ここではMicroProfile 1.0がリリースされた当時の時代背景と絡めてMicroProfileが目指すものや目的を説明させていただきます。

MicroProfile 1.0は2016年9月にリリースされましたが、この頃のエンタープライズJava界隈の状況は以下のようでした。

  • Java EEの停滞
    • 2013年5月にJava EE 7がリリースされ、次のJava EE 8は当初2016年第3四半期にリリースとされていましたが、2016年の前半辺りからJava EE 8のリリース延期や代わり映えしない仕様などの噂[4]が流れ始め、Javaの開発コミュニティからはOracleのリーダシップに対し強い非難と落胆の声が上がっていました
    • また、このJava EE 8の開発停滞がJakarta EEへの移管にも繋がります
  • Cloudの台頭
    • 2010年代前半から提唱されていたマイクロサービスアーキテクチャがこの頃にはある程度一般化し、Cloudの利用を前提としたアーキテクチャが求められるようになってきました
    • そのような中、Java EE 7ではマルチテナンシーなどのクラウドサポート機能の取り込みが見送られた背景もあり、Java EEのクラウド対応の遅さが問題となってきていました

MicroProfileの登場

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このように鈍足で時代に追従するのが難しくなってきたエンタープライズ向けJavaの状況を打破すべく、ベンダーやコミュニティ、有志ら[5]によりEclipse Foundation内で立ち上げられたプロジェクトがMicroProfile Projectであり、そのProjectで策定された仕様がMicroProfile specification、つまり所謂「MicroProfile」となります。

MicroProfileプロジェクトの設立目的は公式ページで説明されていますが、私はこれを要約して下記のように理解しています[6]

MicroProfile®プロジェクトは、マイクロサービスアーキテクチャ向けにエンタープライズJavaを最適化することを目的とし、Jakarta EEかを問わずJavaのエコシステムを活用しながらマイクロサービス向けの新しい共通APIと機能をオープンな環境で短いサイクルで提供してくことを目標にする

短いサイクルとマイクロサービスアーキテクチャと言う文言が含まれていることからも、明らかに当時のJava EEに対するアンチテーゼであったことが分かります。

MicroProfileのバージョンアップサイクル

プロジェクト設立時の目標の1つに短いサイクルでリリースしていくとありましたが、これが実際にどうなったかについて、ver3.1以降のリリース年表をもとに見てみたいと思います。

バージョン リリース 補足
MicroProfile 5.0  4Q/2021  Jakarta EE 9.1準拠の最初のリリース
コード中のpackage名もjakarta.*に変更。機能的にはMicroProfile 4.1と同一
MicroProfile 4.1 3Q/2021 Jakarta EE 8準拠のインクリメンタルリリース
MicroProfile 4.0 4Q/2020 Jakarta EE 8準拠の最初のリリース
依存するjarのartifact名だけをjakarta.*に変更
MicroProfile 3.3 1Q/2020 Java EE 8準拠の最後のリリース
MicroProfile 3.2 3Q/2019 Java EE 8準拠のインクリメンタルリリース
MicroProfile 3.1 2Q/2019 Java EE 8準拠のインクリメンタルリリース

MicroProfileは予定機能がすべて揃った段階でリリースするfeature boxed releaseではなく、予定していた期間で出来たものをリリースするtime boxed releaseを基本とし、v1.1からv3.3のリリースはすべてクォーター(Quarter)ごと行われてきました。

ただ、年表から分かる通り、v3.3からv4.0とv4.0からv4.1の間は期間が3クォータ空いています。これはJakarta EEへの移行に時間が要したものと思われます。それでもJava EEのバージョンアップサイクルの3年~4年に比べれば十分短く、MicroProfileの目標に1つである短いサイクルでのリリースは、今のところ十分に達成されていると思います。

まとめ - MicroProfileとはなにか

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歴史背景も踏まえながらMicroProfileを説明してきましたが、結局のところMicroProfileはなにかを最後にまとめさせていただくと

  • マイクロサービスアーキテクチャで必要となる標準APIや機能[7]を提供する
  • 標準APIや仕様の提供はJakarta EEや既に存在するJavaエコシステムを活用して行う
  • 標準APIや仕様はオープンな環境[8]で策定され、短い間隔でリリースされる

ことを目的にしたSpecification(仕様)のまとまりであり、その策定、管理を行うProject(組織)と考えています。

MicroProfileの目的や目指すところを理解していただいたところで、次回はMicroProfileの仕様や実装について見ていきたいと思います。


参照資料


  1. ここではサラッと書いていますが、実際にはJavaの発展を願うコミュニティとOracleの間では激しいやり取りや議論がありました。この説明をすると本が1冊書けるくらいになるため、これ以上詳細は触れませんが、興味がある方はまずはJakarta EE設立趣意書辺りを見ていただくと当時の状況が分かるのではないかと思います。 ↩︎

  2. Jakarta EEへの変更はJava EE 9のリリース前に行われたため、Java EE 8とJakarta EE 8は実質的に同じものを指します。 ↩︎

  3. Jakarta EE 8は既にJava EE 8としてリリース済みであっため、javax.*がそのまま使われましたが、Jakarta EE 9以降はjakarta.*パッケージへの移行が段階的に進められ、次期バージョンのJakarta EE 10ではServlet APIなど既存APIも含めすべてのAPIがjakarta.*パッケージとなります。 ↩︎

  4. 事実Java EE 8のリリースは当初の予定よりも約1年遅れ2017年9月にリリースされました。 ↩︎

  5. 当時の参加はRed Hat, IBM, Payara, Tomitribe およびロンドンJavaコミュニティとなっています。 ↩︎

  6. 原文はMicroProfileの公式プロジェクトページ: https://projects.eclipse.org/projects/technology.microprofile ↩︎

  7. 原文の”common APIs and functionality”を複数ベンダーが参加するプロジェクトにおける「共通」と言うことから、ここでは「標準API」と意訳しています。 ↩︎

  8. MicroProfileへの参加は、すべてのコミュニティ、企業、グループ、または個人に開かれています。 ↩︎

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