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自作 VS Code 拡張を3年ぶりにアップデートして浦島太郎になった話

| 7 min read
Author: masahiro-kondo masahiro-kondoの画像

はじめに

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先日の「VS Code でユーザー定義スニペットを作って使う」の記事の最後に、筆者が VS Code 拡張を Marketplace に公開していると書きました。この拡張は個人的に毎日使っているのですが、最後の更新が3年前なので、Dependabot のセキュリティアラートがかなり溜まっていたのと、Codespaces ではなぜか動かないという現象があり、アップデートしなくては思っていました。

というわけで、VS Code 拡張をアップデートした話です。滅多にやらない作業というのは次やる時に覚えていないので、記録を取っておきたいところです。そこでこの場をお借りして VS Code 拡張の開発やデバッグ、リリースに付いてメモを残していきたいと思います。

ちなみにアップデートした拡張はこれです。

changelog-support - Visual Studio Marketplace

ChangeLog 形式のファイルを扱う拡張で、ハイライティング、スニペットなどをセットにしたものです。ChangeLog はソフトウェアの更新情報をリリース時に記載するファイルで、古くから Emacs などでサポートされている書式です。

Information

ChangeLog の書式を日々の作業のログというかメモとして活用するという「ChangeLog メモ」というのが20年ぐらい前に流行って、筆者も2007年からこの形式で作業ログを書き続けています。途中で Markdown 形式や様々なタスク管理アプリなどに移行しようとしたのですが、書き始めるまでのアクションが少ない Emacs と ChangeLog のシンプルな書式から離れることができず長年使っていました。Emacs から VS Code に移行する際に ChangeLog メモを書く環境も移行しようということで作成したのがこの拡張です。
このような理由で Emacs の ChangeLog 拡張の仕様は完全に無視で筆者のユースケースにだけ対応したものになっています。公開からかなり経つのですが、まだインストール数が489件(おそらく1割ぐらいは筆者で残りは検索してインストールしたけどユースケースと違うのですぐ捨てたと思われる)で、レイティングも付いていないレベルの超マイナーな拡張です。

開発環境セットアップ

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VS Code の拡張を開発する方法は以下の公式ドキュメントに記載されています。

Your First Extension

初期構築では、プロジェクトを作成するために yo(yomen の CLI) と VS Code 拡張専用の generator をインストールする必要があります[1]。アップデートではこの作業は不要ですが、最新のプロジェクト構成を見るためにインストールしました。

npm install -g yo generator-code

プロジェクトを作成する際には以下のように yo code と実行すると生成スクリプトが対話モードで動きます。

$ yo code

     _-----_     ╭──────────────────────────╮
    |       |    │   Welcome to the Visual  │
    |--(o)--|    │   Studio Code Extension  │
   `---------´   │        generator!( _´U`_ )    ╰──────────────────────────╯
    /___A___\   /
     |  ~  |     
   __'.___.'__   
 ´   `  |° ´ Y ` 

? What type of extension do you want to create? (Use arrow keys)
❯ New Extension (TypeScript) 
  New Extension (JavaScript) 
  New Color Theme 
  New Language Support 
  New Code Snippets 
  New Keymap 
  New Extension Pack 
  New Language Pack (Localization) 
  New Web Extension (TypeScript) 
  New Notebook Renderer (TypeScript)

生成されるプロジェクトの extension.js(ts) で activate / deactivate というフックメソッドを実装します。コードハイライトやスニペットは syntaxes や snippets などの所定のディレクトリに定義ファイルを配置するだけです。

筆者が作成した拡張のソースコードは以下のリポジトリにあります。

GitHub - kondoumh/changelog-support: VS Code extension to support writing ChangeLog.

Information

syntaxes に配置するコードハイライトの設定はモダンエディタの元祖 TextMate のフォーマットで記述します。Atom、Sublime Text、そして VS Code など後発のエディタの台頭でユーザーが減った TextMate ですが、このような資産を残しています。

ライブラリのアップデートなど

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そもそもの初期構築は6年前だったらしくライブラリは完全に別物になっていました。vscode パッケージは deprecated になり @types/vscode に、vscode-test は、@vscode/test-electron パッケージに移行が必要でした。日付を扱うのに moment を使っていましたが、開発がストップしているので API が全く同じ dayjs に移行しました。あとはスニペット定義を少し変えました。

Update dependencies by kondoumh · Pull Request #18 · kondoumh/changelog-support

Codespaces サポート

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今や VS Code 拡張はローカルの VS Code だけでなく、Codespaces や VS Code Remote の環境でも動作する必要があります。これらの環境での開発やデバッグについては以下のドキュメントに纏められています。

Supporting Remote Development and GitHub Codespaces

拡張自体の開発やデバッグも Codespaces 上で可能になっていました。

リポジトリでプルリク用のブランチを作ると Codespaces をそのブランチから起動できます。

start codespaces

Codespaces でブレークポイントを設定しておきます。

Add brekpoint

この状態で、F5 キーを押すか左側のアイコンでデバッグ実行を選択すると、拡張を有効にした状態の Codespace が別タブで起動されます[2]。下のスクリーンショットで「拡張機能開発ホスト」と書かれているタブです。

debug on another tab

拡張機能開発ホストのタブを開きます。

extension development host

このタブで拡張を実行するためのファイルを作成します。

create target file

コマンドパレットから拡張のコマンドを呼び出します。

trigger command of extension

元のタブの Codespaces ではブレークポイントで実行が止まります。

Debug extension

動画にした方がわかりやすいと思いますが、これはかなり驚きました。ドキュメントによると、VS Code 拡張はローカルでは Extension Host、Codespaces などのリモート環境では VS Code Server の Remote Extension Host という仮想環境にロードされて実行されます。この Remote Extension Host との通信を2つの Codespace で共有してデバッグ機能を実現しているようです。

Marketplace への公開

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さて、コード修正が終わったのであとは公開です。公開手順は以下のドキュメントに纏められています。

Publishing Extensions

ここで一つ難題が。Markeplace への公開には Azure DevOps のアカウントでの Personal Access Token が必要になります。前回の公開が昔すぎてトークンをどうやって発行したのか全く覚えていませんでした。

トークン発行の手順自体は以下のドキュメントにあります。

個人用アクセス トークンを使用する - Azure DevOps

Azure DevOps は以前は VSTS(Visual Studio Team Services) と呼ばれており、Azure とは独立したサービスでした。この数年で Azure との統合が進んだのでしょうか。サービス名からして当然なのですが、筆者の記憶では Azure と結びついていませんでした。

とにかく久々に Azure の個人アカウントにログインし、Azure DevOps サービスのランディングページを開きました。

Azure DevOps LP

赤い矢印の先が Azure DevOps Organizations のリンクです。やっと昔作ったプロジェクトに辿り着きました(ここまでくるのに30分はかかりました)。

Azure DevOps Profile

ユーザー設定のアイコンから Personal access token が選択できます。

PAT menu

あとは、トークンの発行です。Marketplace に公開するパーミッションのスコープはデフォルトの画面では出てこないので、Custom defined を選択した上で全てのスコープを表示し、MarketplaceAcquireManage にチェックを入れます。

new token

Create をクリックすると無事トークンを取得できました。これで拡張をパッケージングして公開できます。

パッケージング、公開用の CLI である vsce をインストールします。

npm install -g @vscode/vsce

次に拡張のプロジェクトディレクトリで vsce package を実行してパッケージングを実行します。

$ vsce package
This extension consists of 460 files, out of which 364 are JavaScript files. For performance reasons, you should bundle your extension: https://aka.ms/vscode-bundle-extension . You should also exclude unnecessary files by adding them to your .vscodeignore: https://aka.ms/vscode-vscodeignore
 DONE  Packaged: /Users/kondoh/dev/changelog-support/changelog-support-0.2.0.vsix (460 files, 431.29KB)

changelog-support-0.2.0.vsix のような名前で Visual Studio パッケージファイルが生成されます。

最後は公開です。先ほど作成したトークンをクリップボードにコピーしておき、vsce publish を実行してトークンを貼り付けます。

$ vsce publish
This extension consists of 460 files, out of which 364 are JavaScript files. For performance reasons, you should bundle your extension: https://aka.ms/vscode-bundle-extension . You should also exclude unnecessary files by adding them to your .vscodeignore: https://aka.ms/vscode-vscodeignore
https://marketplace.visualstudio.com/manage/publishers/
Personal Access Token for publisher 'kondoumh': ****************************************************

The Personal Access Token verification succeeded for the publisher 'kondoumh'.
 INFO  Publishing 'kondoumh.changelog-support v0.2.0'...
 INFO  Extension URL (might take a few minutes): https://marketplace.visualstudio.com/items?itemName=kondoumh.changelog-support
 INFO  Hub URL: https://marketplace.visualstudio.com/manage/publishers/kondoumh/extensions/changelog-support/hub
 DONE  Published kondoumh.changelog-support v0.2.0.

無事公開されたようです(反映まで数分かかります)。

拡張をインストールする

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リリースした拡張をインストールしてみます。

Codespaces では VS Code と同様に検索してインストール可能です。

Install on Codespaces

普通に動作しました。

VS Code でインストール済みの場合は、ウィンドウ再起動のタイミングで最新版がダウンロードされ、リロードを促されました。

Update on VS Code

最後に

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VS Code 拡張をアップデートすることで Codespaces とのインテグレーションに驚かされました。
ローカルで使っている VS Code 拡張を Codespaces 対応したいケースは増えていくでしょう。ホスト OS の API 呼び出しなど特殊なことをしていなければそのまま動くと思います。

Marketplace への公開は Azure のアカウントで PAT を発行しないといけないため、常日頃使っていない筆者はけっこう手間取りました[3]


  1. yomen はかつてボイラープレート作成のためにかなり使われていた印象がありますが、今も現役なのですね。 ↩︎

  2. ローカルでデバッグする時は、VS Code のインスタンスが別ウィンドウで起動します。 ↩︎

  3. Azure のサービス体系もかなり変化しますし、アカウントを消していたりすると詰んでしまいますね。 ↩︎

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