よりよい方法を見つけだそうとし続けている: アジャイルに必要な知恵はすべて鮨屋のカウンターでも学んだ

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これは豆蔵デベロッパーサイトアドベントカレンダー2025第18日目の記事です。

はじめに

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生成AIの進歩等により、人間にはますます知識よりも知恵が必要だと感じるビジネスソリューション事業部アジャイルグループの岸本大輔です。
アジャイル開発宣言が公開されてもうすぐ四半世紀。人によっては「まだまだこれから」「もうあたりまえ」あるいは「今となっては古い」など様々な意見があるようですが、重要なのは「よりよい方法を見つけだそうとし続けている」ことだと思います。
SAFeやLessやScrum@ScaleやDA等、アジャイルをスケールする工夫もそれぞれ進化しています。用語やこだわりポイントは多少違いますが、お互いリスペクトしながら参考にされているので少し抽象化して見ると似ている部分も多いですね。経済学や心理学等、様々な分野の知見もうまく活かしながら「よりよい方法」を見つけだそうとし続け、永遠のβ版になっている印象です。
それでも「スクラムのイベントが形骸化している」という悩みを持つチームもあります。「アジャイル」「スクラム」「リーン」などの名前ややり方だけではなく「何のために?」「どうなると幸せ?」について考えていると、ソフトウェア開発以外でも似たようなことがたくさんあり、それらを見つけて参考にするのが「気付き」や「刺激」になると思います。
ということで今回はお鮨屋さんを舞台に、アジャイルについて考えてみたいと思います。アジャイル初心者向けの知識習得には適していませんが、スクラムマスタやアジャイルコーチの考え方の引き出しを増やすための「気付きのきっかけ」になるとうれしいです。
以前、よりよい方法を見つけだそうとし続けている: 自由があればよりよく進化するでも、「何でもアジャイルに見える例」をいくつかご紹介いたしましたが、今回のお話はお鮨屋さんに行くたびにアジャイルについて考えてしまう症状が出てしまう可能性がございますので、あらかじめご了承いただけますようお願いいたします。

人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ

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ちょっと昔の本ですが、タイトルがキャッチ-で覚えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?
実際、幼稚園の砂場で多くのことを学んでいたと思います。人生(そしてアジャイル)について。
昼寝の時間までのタイムボックス。こんなこともあったのでは?
砂場で「山を作りたいな~」「おもしろそうぼくも作る~」「わたしも~」みんなでモブワーク。
「ぼくは水をかける」「じゃあわたしは山を固めるね」「ぼくはトンネル掘るね~」「じゃあわたしは反対側から掘るわ」と自己管理。
「砂の固め方が弱くてつぶれちゃったね」「水かけすぎちゃってごめんね」ってふりかえり。
「じゃあ次はもっと大きい山にしてトンネル2本掘ろうか?」「楽しみ~♪」って次に何をするかの計画を相談。
そしてミルクを飲んでみんなでお昼寝♪

アジャイルに必要な知恵はすべて鮨屋のカウンターでも学んだ

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みなさんお鮨はお好きでしょうか?
お鮨屋さんではテーブル席で握りセットを頼みますか? それともやはりカウンターで一貫ずつ頼みますか?

例えば2人でテーブル席に座って、メニューで握りの「松セット」「竹セット」「梅セット」の写真と価格を見て、どれにするか選んだ場合、それぞれ一人前の個数やネタの種類や価格がはっきりしていて、全て揃ってからまとめて配膳(リリース)されます。なんだかウォーターフォールっぽいですね。
いきなりまとめて出てくるので、もし一貫食べて期待外れでもどうしようもありません。

ではカウンターに座った場合はどうでしょうか?
「飲み物は何にされますか?」みたいな感じで会話が始まり「今日は天然ひらめの縁側が入ってますよ~」ってことで「じゃあ塩炙りで」と答えつつネタケースに目を走らせる。
食べたいものから順番に食べたいタイミングで注文し、お腹がふくれて満足すればいつでもごちそうさま♪
もし期待外れなら早々に店を出ることもできます。

他のお客さんも、それぞれお気に入りのお鮨を頬張っています。
カウンターの中で握っている鮨職人さんは、周りの何人かのお客さんの注文を聞いて、基本的には注文された順番でお客さんに提供しますが、炙ったり多少時間がかかる注文は前後することもあります。
でもなぜかそれで揉めることはあまり無いんですよね~
鮨職人さんの状況がお客さんたちに全部見えている(見える化されている)のが大きいんだろうなぁと思います。
もちろん聞こえる化も有効です。他のお客さんが注文してる時に割り込んで注文したりしないですよね?(自粛的排他制御?)
他のお客さんが「このウニおいしい~」って言ってるとウニが食べたくなるし、ネタケースを見てトロサーモンが少なくなってたら次に頼もうと思っていた寒ブリやめて、先にトロサーモンを頼んでみたり...
優先順位は自然に次々変わっていきますよね~

お客さんが食べる速度と、鮨職人さんの握る速度。だいたい3~5人ぐらいのお客さんを相手に握れる感じでしょうか。
ネタ等の都合により多少前後することはあっても、注文の順番は結構重要です。
それぞれのお客さんごとにプロダクトバックログがありつつ、それらを時系列でマージして1人の鮨職人さんが握るイメージ。
赤だしやお茶やお酒類などの注文は、鮨職人さん以外の店員さんが非同期で持ってきてくれることが多いですね。

注文するお客さんはそれぞれプロダクトオーナー。握ってくれる鮨職人さんは開発者。親方(店主)はスクラムマスターという感じでしょうか?
(店を拡大したい場合、「カウンター5席&鮨職人さん1人」の単位で増やしていけば大規模アジャイル?)

鮨屋のスクラムチーム

「またこの鮨屋で食べたいなぁ」と思うか思わないかは、何で変わるでしょうか?

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お鮨の味はもちろん、価格や店の雰囲気や鮨職人さんの対応等、全ての顧客体験が影響しますよね?
ネタが新鮮で調理器具や食器も清潔で衛生上問題が無いというのはもちろん、頼んだお鮨の味が期待以上においしいという「体感できる価値」が品質。

鮨職人さんが特に気をつけるべきことはなんでしょうか?
食中毒等の発生防止や身だしなみ等、衛生面。
お客さんに快適に過ごしていただく言葉遣いや振る舞い等、接客面。
観光地の近くのお店であれば、英語での観光地紹介も多少はできた方がよさそうですね。
そしてもちろんカウンターに立つにふさわしい鮨職人としての調理スキルや品位。

でも、もしも「お客様と鮨職人さんの間に入ってやたら管理したがるタイプの親方がいる鮨屋」だったら?

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親方が気になることはなんでしょうか? 一貫の米粒の数が360~370になっていることでしょうか?
鮨職人さんが握ってお客さんの前に出したヒラメの握りを「ちょっとリリースしても問題がないか検査します」と言って横取りして米粒を数えたりしますでしょうか?
顕微鏡で一貫一貫、お客さんの目の前で確認し「菌はいません。安心して召し上がってください」と言いたいでしょうか?
それでお客さんは安心しますでしょうか?
逆に不安になるのではないでしょうか?

鮨職人さんがカウンターでお客様に鮨を握っている「今」 親方が本当にやるべきことは何でしょうか?

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もちろん食品衛生法や食品表示法、水産物の規格基準や労働安全衛生関連等の遵守が必要です。そしてHACCPに沿った衛生管理も2021年6月以降義務化されています。
特にお鮨屋さんは生魚を扱うため、食中毒リスクが高く、徹底した衛生管理が必須です。
でもお客さんの体験品質も重要ですよね。

完了の定義、準備完了の定義、受入基準のように分けるとこんな感じでしょうか?

  1. 完了の定義(店全体での品質基準)
     法令・安全基準
      食品衛生法遵守:調理場の衛生、従業員の健康管理、食材保管温度。
      HACCP対応:工程ごとの危害要因分析と管理基準。
      アレルゲン・原材料表示:テイクアウトや宅配時の必須情報。
     店舗体験(ユーザーエクスペリエンス)
      清潔なカウンターと器具。
      鮨職人の所作が美しく、雰囲気が落ち着いている。
      提供タイミングはお客様のペースに合わせる。

  2. 準備完了の定義(握り始める前に満たす必要がある条件)
     ネタが規定温度で保管されている。
     調理器具が洗浄・消毒済み。
     鮨職人の手洗い・衛生確認完了。
     注文内容が明確で、お客様の好み(わさび有無など)確認済み。

  3. 受入基準(鮨ネタごとの品質基準)
     「ユーザーストーリーごとの受入条件」に近い考え方。
     お客さん個人ごとにネタに対する期待値は異なりますが、それに対してどの程度超えられるのかが重要。
     おいしさを数値的に表すのは難しいですね。同じ鯛でも産地や季節や個体によって異なりますし...
     鯛(白身魚)
      鮮度:透明感と弾力あり。
      温度:冷蔵0~5℃。
      切り付け:筋目を活かした美しい断面。
     うなぎ
      加熱:中心温度75℃以上で1分以上。
      タレ:焦げすぎず均一な照り。
      提供:温かいうちに出す。
     ウニ
      色:鮮やかな黄色~オレンジ。
      匂い:海の香り。異臭なし。
      盛り付け:崩れないよう丁寧に。

店内の清掃や、シャリやネタの準備は、もちろん暖簾を上げる前に完了させますが、開店から時間がたてば、ネタの補充や鮨職人の休憩なども必要になります。
一般の飲食店でも「大きな声で店員に指示する店主がいるお店はちょっと落ち着かない」と思われる方が多いと思いますが、落ち着いた静かなお鮨屋さんならなおさらですよね。
熟練した鮨職人さんは状況さえ把握すれば何をすべきかもわかります。ですので状況に「気付いてもらう」だけで十分です。もし何をすべきかわからない時はその場は親方が対応し、閉店後に反省会。
親方は静かに目や耳で店内の状況を観察しながら、目配せや目立たない振る舞いで、阿吽の呼吸で鮨職人さんたちとコミュニケーションをとり、絶えずよりよい顧客体験になるよう配慮されています。
この心地よさはおいしい日本酒も効いてるのかなと思いつつ、そろそろ満腹です。ごちそうさま♪

おわりに

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海外でも人気のお鮨。一人前の鮨職人さんになるには10年以上の修業が必要と言われていますが、最近では年齢や性別関係なく専門の学校で短期間に効率よく技術習得もできるようですね。
ここでもよりよく流れるように進化するという「コンストラクタル法則」が当てはまりそうです。
確かな技術の上で、さらにお客さんに満足いただけるように、自分たちで自由に工夫する。そのフィードバックはリアルタイムに返ってくる。
よりよい方法を見つけだそうとし続ける自由は誰も奪えない。

お鮨屋さんのカウンターで鮨職人さんが握ったお鮨を、お客さんがおいしそうに食べているのを見ていると、アジャイルについてもいろいろ考えてしまいます。
もうすぐ2026年。みなさまにとってよりよい年になりますように!

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