未来実現ツリー活用の中間目標で現場を動かす|デキるPMの改善計画術
Back to Topはじめに
#以前の記事「因果関係図を活用した問題解決手法|現場改善に効くデキるPMの実践ステップ」では、現場の問題を見える化し、根本原因からの解決策を導く方法を解説しました。
本記事では、その続編として、未来実現ツリーを活用し、目標設定と実行プランに落とし込む手法を紹介します。
実際のコンサル現場での事例を交え、次の3ステップで進めます。
- Step1:未来実現ツリーで「中間目標」を明確化する
 - Step2:実行可能な改善計画の作り方
 - Step3:効果検証と因果関係の見直し
 
1. 未来実現ツリーで「中間目標」を明確化する
#未来実現ツリーは現状ツリーの根本原因を望ましい状態に置換し、ゴールまでの因果関係を描く手法です。
この過程で設定するのが 中間目標 です。
中間目標の役割
#- ゴール到達までの通過点を明確化
 - 関係者全員で進捗を共有する基準になる
 - 優先順位付けと施策の整合性確認に活用できる
 
注意:中間目標とゴールのつながりが不明確な場合は、因果構造を再検討しましょう。
また、現状ツリーは定期的に更新することで、変化する現場状況にも対応できます。
2. 実行可能な改善計画の作り方
#改善計画は、アイデアを「誰が・何を・いつまでにやるか」にまで落とし込むことが重要です。
作成ステップ
#- 効果と実行難易度の整理
→ 短期で効果が大きい施策を優先 - 必要リソース・スキルの明確化
 - ロードマップ作成(中期・長期視点も含める)
 - 実行責任者の決定と期限設定
 
ポイント:短期施策は成果を早く出すため、長期施策は構造的課題の根本解決のために行います。
両者を組み合わせるのが理想です。
3. 効果検証と因果関係の見直し
#計画の実効性を高めるため、中間目標は定量的な指標に変換しましょう。
指標例
#- テスト自動化率:目標 80%/実績 72%
 - 緊急リリース回数:半年以内 3回以内/実績 5回
 
未達成の場合は以下を確認します。
- 因果関係の仮説が誤っていないか
 - 実行プロセスに不備がなかったか
必要に応じて、再び原因分析に戻り計画を修正します。 
【事例】コンサル現場での問題解決プロセス
#背景と課題
#あるクライアント企業は長年プロセス改善に取り組んでいました。
しかし、マネジメント層からは「改善が定着しない」という声が上がっていました。
ビジネスゴールは、モノづくり力の強化と製品化のスピードアップです。
これを阻む構造的な問題の分析を、我々にご依頼いただきました。
現状ツリーによる問題構造の可視化
#現状ツリーで組織内に潜む複雑な問題構造や負のスパイラルを可視化しました。
ヒアリングと成果物分析から、次の課題が明らかになりました。
- 
開発リーダー層の業務過多
懸案対応やレビューが滞り、リーダー層がボトルネック化していました。 - 
管理ツールの形骸化
RedmineとExcelの二重管理が発生し、業務過多を助長していました。 - 
人材育成の仕組み不足
組織的なスキルアップが行われず、メンバーの力不足を招いていました。 - 
プロジェクト運営のコントロール不全
力不足のため協力会社への丸投げが増え、外注管理の杜撰さもあり計画逸脱が常態化していました。 - 
製品に対する当事者意識の希薄さ
その場しのぎの作業が増え、品質低下の一因となっていました。 
負のスパイラルの実態
#問題を整理すると、「開発リーダーの業務過多」と「製品開発に対する力不足」という2つの根本原因に集約されました。
これらは次の2つの負のスパイラルを生み出していました。
- 
スパイラル①
業務過多 → 責任意識低下 → 離職 → リソース不足 - 
スパイラル②
スキル不足 → 品質低下 → 不具合増加 → 失敗コスト増加 
未来実現ツリーと正のスパイラルの設計
#「望ましい状態」に転換した因果関係をもとに、正のスパイラル形成とビジネスゴールへの道筋を描いています。
負のスパイラルを断ち切るため、以下の「望ましい状態」に置き換えを行いました。
- 業務負荷の分散
 - メンバーのスキル強化
 - 責任感を持った製品開発体制の構築
 
これにより、正のスパイラルが形成され、ビジネスゴール達成への道筋が明確になりました。
解決策の具体化|短期と長期の改善アプローチ
#根本原因の解消に向けて、以下のような解決策を検討・実行しました。
| 解消すべき根本原因 | 解消された状態 | 解消のための解決策 | 
|---|---|---|
| 開発リーダーの業務過多 | 業務分散・効率化 | 外部PM調達、PM支援ツール導入 | 
| 製品開発に対し力不足 | スキル強化 | 育成計画の策定、研修プログラム設計 | 
短期的にはボトルネックの解消を重視し、長期的には育成戦略による構造的な改善を進めました。
おわりに|問題解決を成果に結びつける実行の工夫
#本記事では、因果関係図で描いた未来像を出発点に、中間目標の設定と実行計画の立案を通じて、問題解決につなげるプロセスを解説しました。
「見える化」された問題を「解決」へ導くには、実行と検証のループが不可欠です。
問題を見える化するだけで終わってはいけません。
解決策を行動に落とし込むことが、現場改善の第一歩です。
この記事は「デキるPMシリーズ」の一部です
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