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ジュールシーフ回路を使って乾電池1本で白色LEDを点灯させてみる

| 3 min read
Author: shuichi-takatsu shuichi-takatsuの画像

今回は電子工作の小ネタをやってみたいと思います。
お題は「使い古した乾電池1本で白色LEDを点灯させる」です。

乾電池1本の電圧ってどれくらいか?

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乾電池1本の電圧ってどれくらいかを知っておこうと思います。
よく使用される単3アルカリ乾電池を例にとると、使い始めの電圧は通常1.5ボルト程度です。
電圧は比較的一定で推移しますが、使用されるにつれて徐々に電圧が下がります。
電圧の下がり方は、使用されるデバイスや使用状況によって異なりますが、一般的には急激な減少ではなく、ゆっくりとした減少となるようです。
使い終わるときの電圧は、通常は使用開始時の電圧よりも低くなり、0.9ボルト〜1.0ボルト程度となるようです。
これも使用された環境やデバイスによって異なります。

調べてみると、乾電池の終了電圧については規格があり、国際的に定められているようです。
一般的な単3アルカリ乾電池の場合、International Electrotechnical Commission (IEC) 60086規格に基づいており、使い終わりの電圧は0.9ボルトとされています。

LEDを発光させるために必要な電圧はどれくらいか?

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LED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)を発光させるのに必要な電圧は、LEDの種類や色、製造元によって異なりますが、一般的なLEDの動作電圧は2ボルトから3.5ボルトの間が多いようです。

LEDの色別にどれくらいの電圧(順電圧:Vf)が必要かを調べてみました。
詳しくは各LEDのデータシートを見る必要がありますが、おおよそ以下のようです。

順電圧(Vf)
赤・橙・黄・黄緑・純緑 1.8~2.2ボルト程度
白・電球色・青・青緑 3.2ボルト前後

上記の表によれば白色LEDを単3乾電池1本(1.5ボルト以下)で点灯させるのは”無理”という結論になります。

ジュールシーフ回路

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百円ショップなどでは単3乾電池1本で点灯するLED懐中電灯が売られています。
先ほど述べた理屈では白色LEDを点灯させることは無理なはず。
色々と調べてみると「ジュールシーフ回路」という言葉が見つかりました。

ジュールシーフ回路を使うと、1.0ボルド程度の電圧でも白色LEDを点灯させることができるようです。
ジュールシーフとは”宝石泥棒/Jewel Thief”をもじった表現のようです。
”泥棒”というよりも、”搾り取り器”っていう方が適切かと思いますが。

「ジュールシーフ」でネットを検索すると色々なサイトがヒットしますが、こちらの情報を参考にして、次のような回路を組んでみました。
回路図はこんな感じです。

ブレッドボード上に組み上げた回路の画像がこちら。

ありあわせの部品で組んだので、抵抗やコンデンサ、コイル(マイクロインダクタを2つ使用)の数値はかなり適当です。
トランジスタはC1815を使います。(トランジスタとしては定番ですし、自宅に20~30個ほどあったので)

この回路の主役はコイルとトランジスタです。
トランジスタを改造するのは難しいので、コイルの方を色々といじってみます。

手持ちにトロイダルコアがあったので手巻きコイルを作ってみたり

ジャンク箱の隅に落ちていたチョークコイルに巻線を追加してみたり

各部品の数値はかなり適当であるにもかかわらず、どの組み方でも1.0ボルト程度の電圧で白色LEDを点灯させることができました。
消費電力は、マイクロインダクタを使った回路では1.0ボルト、3ミリアンペア(=3ミリワット)でした。
手巻きコイルとチョークコイルを使った回路では1.0ボルト、1ミリアンペア(=1ミリワット!)でした。
かなりの省電力が期待できます。

なぜ白色LEDは点灯するのか

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しかし、そもそもなぜ乾電池1本程度の入力電圧で白色LEDを点灯させることができるのでしょうか?

今回組み上げた回路は発振回路であり、実際にはLEDは高速で点滅しているのですが、人間の目には点灯しているように見えるのです。
以前の記事「Raspberry Pi PicoとAndroidスマートフォンでオシロスコープを構築する」で紹介したスマートフォンオシロスコープ「Scoppy」を使ってLEDに加わる電圧波形を確認してみます。

周波数は約145kHz、デューティ比は約50%で、3ボルト付近の電圧が確認できます。
この電圧が白色LEDに印加されるため点灯(高速で点滅)するようです。

LEDランタンを魔(?)改造

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ジュールシーフ回路なら使い古した乾電池から限界まで電力を搾り取れそうです。
折角なので、自宅に置いてあった災害時用LEDランタンを改造してみます。
(なにかの展示会を訪れた時に貰ったものだと思います)

このLEDランタンを点灯させるためには単3乾電池が4本必要でしたが、災害時には乾電池は貴重なので単3乾電池1本でも点灯するように魔改造(笑)します。

手持ちのユニバーサル基板(AliExpressで買った激安品)に回路を実装しました。
回路基板をランタンに組み込むために、コイルをもう少し小型の63μHのものに、コンデンサを小型の0.047μFのものに変更しました。
(これでも十分に明るく点灯しました)

そして回路基板を単3乾電池3個分のスペースに”無理やり”押し込みました。

このLEDランタンにはLEDが7個もついていましたが単3乾電池1本でちゃんと点灯してくれました。
安定化電源装置を使って消費電力を測定したところ1.0ボルト、8ミリアンペア(=8ミリワット)程度を消費していました。

まとめ

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ジュールシーフ回路を使って乾電池1本で白色LEDを点灯させることができました(実際は高速点滅)。
特に、使い古した乾電池でも1.0ボルト付近の電圧は出せるので、LEDライトなどで再利用させてみてはいかがでしょうか。

今回作成したLEDランタンが活躍する時なんて来ないと良いのですけどね。

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