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東洋哲学とスクラム

| 3 min read
Author: akihiro-ishida akihiro-ishidaの画像

はじめに

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初めまして、アジャイルグループの石田です。去年の10月付で豆蔵に入社しました。
まずは軽い自己紹介も兼ねて、今回のタイトルの導入としたいと思います。

私がスクラムに出会ったのは本当にごく最近、2022年の春です。
前職のユーザー企業でのプロジェクトの中で、アジャイル開発のPoCを行うために、スクラムマスターという役割を任せていただいたのがきっかけでした。
そしてスクラムの勉強のためスクラムガイドや代表的な入門書をいくつか読んでいたのですが、その中で私が一番感じたのは、

「スクラムって東洋哲学っぽいな」

ということでした。
哲学についても深い知識があるわけではありませんが、当時、哲学の入門書を並行して読んでいたことも原因です。

西洋哲学と東洋哲学

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哲学は、大きく西洋哲学と東洋哲学の2つに分類されます。

その違いは、西洋哲学は「世界の根源とは何か」といった「人間の外側」に興味を向けているのに対し、東洋哲学は「自己(私)とは何か」という「人間の内側」に興味を向けていると言われます。

どちらも「真理」(変わることのない真実)を追求していることには変わりありませんが、西洋哲学はそのために一段ずつ論理立てて解決していく「階段型」なのに対し、東洋哲学は真実を悟った開祖(釈迦、孔子、老子など)の教えを弟子や後世の人々が解釈していく「ピラミッド型」の構造をしています。
哲学は学問の根源と言われますが、西洋哲学は科学や数学、東洋哲学は宗教や文学に通ずるところがあります。

理性主義と経験主義

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西洋哲学の場合は、知識として得たものは、そのまま「知った」ものとしてみなされます。数学の方程式や、科学の理論などを順序立てて説明ができれば、それは知っているものとして認められるのと同様です。これは、理性主義的と言えます。

理性主義

Wikipediaより引用
理性主義(りせいしゅぎ、英: rationalism)は、確たる知識・判断の源泉として(人間全般に先天的に備わっている機能・能力であると信じる)「理性」を拠り所とする、古代ギリシア哲学以来の西洋哲学に顕著に見られる特徴的な態度のこと。

一方東洋哲学では、知識として得たものを、知っているだけでは「知った」とはみなされません。私は真理に到達しました、この世の全てを悟りました、といくら語ったところで、経験を伴わない知識では知っているものとは認められません。それを真に知っているのは真理を悟った開祖だけであり、後世の人たちがどれだけそれを考察し、全てを理解しようとしても、自身が開祖にならない限りは真理を知ることはできません。東洋哲学は、経験主義に基づいています。

経験主義

Wikipediaより引用
経験論(けいけんろん)、あるいは、経験主義(けいけんしゅぎ、(英: empiricism)とは、「人間の全ての知識は我々の経験に由来する」とする哲学上または心理学上の立場である。

スクラムにおける経験主義

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スクラムガイドでは、スクラムの理論として以下のような記載があります。

スクラムは「経験主義」と「リーン思考」に基づいている。経験主義では、知識は経験から⽣まれ、意思決定は観察に基づく。リーン思考では、ムダを省き、本質に集中する。

この「経験主義」という言葉に、東洋哲学的な考えが含まれているのではないかと考えています。

スクラムガイドはとても短く、抽象的なことしか書かれていないという印象を持ちます。たとえスクラムガイドを丸暗記したところで、スクラムを理解したと言い張る人はそういないでしょう。
スクラムガイドの内容を自分なりに咀嚼した上で、まずは試してみる。その経験をもとに、チームでより良いスクラムの形を作り上げていく。スクラムを実践する上では、この経験主義を土台とする必要があります。

一方、最初に要件定義からリリースまでの工程全ての計画を立て、その計画通りに進めていくウォーターフォールは、理性主義、西洋哲学的であると言えるでしょう。

スクラムを悟る

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仏教の開祖である釈迦は、老病死の苦しみを克服するため、出家後に「苦行」を行ったとされます。世の中の苦しみを悟るためには、その苦しみを経験して理解しなければならない、と当時考えられていたためです。
しかしその後釈迦は考えを改め、苦行は悟りのためには逆効果だと考えました。どれだけ苦しい思いをしたかを、悟りの境地に到達するための指標とするのは間違っています。両極端の考え方や行動は避け、「中道(極端ではない状態)」が悟りを得るには最適な状態だと言えます。

中道

Wikipediaより引用
仏教用語としての中道は、2つのものの対立を離れていること。断・常の二見、あるいは有・無の二辺を離れた不偏にして中正なる道のこと。中行、中路あるいは単に中ともいう。

このあたりの釈迦の物語については、手塚治虫の「ブッダ」がおすすめです。

これは、スクラムチームは持続可能なペースで働ける環境でなければならない、という考えに通ずるものがあります。スクラムを悟るためには、その働きは苦行であってはいけません。

まとめ

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最初に書いた通り、私はスクラムマスターとしてはまだまだ駆け出し、これから少しずつキャリアを積んでいく立場です。スクラムの開祖にはなれなくても、経験を積んでいき、みなさんと一緒にピラミッドの一部になれたらと思います。

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