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スクラムマスターとは結局何をする人なのか

| 3 min read
Author: makiko-nakasato makiko-nakasatoの画像

これは豆蔵デベロッパーサイトアドベントカレンダー2023第19日目の記事です。

はじめに

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中佐藤です。

今回のタイトル、何をいまさら、だと思います。スクラムが日本で広まり始めた約10年前には、この質問はよく訊かれました。スクラムガイドの記述は抽象的だし、「従来のプロジェクトマネージャーやリーダーではない」ということが強調されるけど、じゃあ結局何するの、と。

その後さまざまな書籍が出版されてそれをおすすめしてみたり、言葉を重ねて説明したりしてきたものの、ひとことで自分の言葉で語れないことに、ひそかにモヤモヤしていました。
最近になってやっとこれかな、と思う言葉にたどり着いたので、これをネタにアドベントカレンダーの記事にしてみます。

その一言とは

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正確には二言(2つの文)です。

『ステークホルダー、プロダクトオーナー、開発者間の情報と成果の流れがスムーズかを観察し、滞っている箇所に気づいたら、なんらかの対策をする。さらに自らを含むチームの振る舞いの透明性を維持する』

少しずつ思うところを解説していきます。

「情報と成果の流れがスムーズかを観察」

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アジャイル開発は、この情報(主に要望)と結果として生み出される成果が短いスパンで流れ続ける手法です。従来の開発以上に圧倒的にサイクルが短いので、これが滞るとすぐに手待ちや無駄が発生します。
スクラムマスターはこのValue Streamを絶えず観察している必要があります。

ひとことで「観察」と言ってもこれが結構難しい。スクラムマスターはチームのどこでこの情報と成果がやり取りされているかを知る必要があります。それはスクラムイベントのこともあり、スクラムイベント以外の定例会議等のこともあり、チャットツールやチケット管理ツール上でのやり取りのこともあるでしょう。
リモートワーク中心であれば、オフィス内で雑談がてら(たとえばおやつ神社前や喫煙ルームで)やり取りされる情報が少ないので、把握はしやすい反面、雑談機会が少ないためにカジュアルに情報が得られづらいという側面もあります。

いずれにしてもValue Streamが滞ることで、何らかの問題が表出することが多いです。スクラムマスターはそうやって問題が表面化した際に、その原因を探るために日頃からチーム状況を把握しておく必要があります。

「ステークホルダー、プロダクトオーナー、開発者間の」

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スクラムマスター初心者ははじめのうちは、開発者間のコミュニケーションを見ることで精一杯でしょう。しかし、その支援範囲を徐々にプロダクトオーナー、さらにはステークホルダーへと拡大していってください。

アジャイル開発の経験がある人も増え、開発者間のやり取りはうまく行われている場合が多くなりました。それでも、初顔合わせのメンバーであったり別の会社から来ているメンバーであったりすると、戸惑いがあることもあります。新規参入メンバーがチームのValue Streamを把握し、できるだけ早く成果に貢献できるようにする必要があります。
プロダクトオーナーと開発者間のコミュニケーションをスクラムマスターが支援すべきなのは、ご存じの方が多いでしょう。

よく言われる「スクラムマスターはまずはスクラムイベントのファシリテーションをする」というのも、決して間違いではなく、これによってチーム内のValue Streamをスムーズにしていると考えられます。もし、スクラムマスターがファシリテーションしなくても、ちゃんとスクラムイベントが回る(コミュニケーションがスムーズ)なのであれば、任せてしまってよい。その分、他のところに注力できます。

この頃よく目にするのは、ステークホルダーとプロダクトオーナー間、さらには複数いるステークホルダー間のコミュニケーションの問題です。ここまでくると、関係者の会社や大きな組織単位が異なることも多く、そこまで責任持てないよ、と思う方も多いでしょう。
しかし、これがチームの生産性に影響を与える問題なのであれば、スクラムマスターはチームを支援するために、そこも自らの関心範囲とすべきだと思っています。

「滞っている箇所に気づいたら、なんらかの対策をする」

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ステークホルダー(時に会社のシニアマネジメントのこともある)に、自ら働きかけなんてできないよ、と思った方。だからこそ「なんらかの対策をする」としました。
自ら動いてできることであれば動けばよいし、これは他の人に(例えば開発者に)働きかけて動いてもらったほうがよいと判断すればそうすればよい。あえて誰、と指定しなくても、ここは何とかしたほうがいいと思っている、と表明することもひとつの働きかけです。どう行動するのが最適かという判断ができるようになるために、日々チームを観察しているのです。

さらに、これはスクラムチームだけでは解決できないと思ったなら、マネジメントに働きかけてください。「○○を目的にアジャイル開発を行っているが、△△でのやり取りがうまくいっていないようで、チームの生産性に影響している。これはマネジメントとして動いてほしい」という働きかけは、チームの誰からしてもよいのですが、元からチームを観察しているスクラムマスターが一番に気づくはずですし、誰にどう働きかければいいかもわかるはずです。

「滞っている」としましたが、「滞りそうな」も含みます。
大人数が集まるイベントは何となく開催するだけでは、コミュニケーションがうまくいかないこともあります。その際に、参加者同士がいかにうまくコミュニケーションできるようにするか、意義あるイベントにできるかは、あらかじめ十分に考えておく必要があります。

スクラムマスターは確かにValue Streamの外にいますが、当然ながらチームの一員です。チームの中で起こるあらゆることに、少なくとも責任の一端があるという覚悟が必要です。

「自らを含むチームの振る舞いの透明性を維持する」

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よいスクラムチームはチーム内の結束が強いです。これはもちろんいいことなのですが、反面、チーム外からは「何をやっているかよくわからない」と思われがちです。
これはスクラムマスター自身もそうです。価値創出に直接関わらない分、チーム外から、うっかりするとチーム内でも、何をしているかがわかりづらい。

このような透明性の欠如は、チームやスクラムマスター自身への不信感につながります。時にはマネジメントにも物申す必要があり、その際に不信感があると話を聞いてもらえません。このような状態にならないように、どうすればチームと自らの動きを関係者から可視化できるかを考えてください。

まとめ

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みなさまご存じの通り、スクラムの三本柱は、透明性・検査・適応です。
特に透明性が最初に来ているのは、これが検査・適応の前提になっているからですが、リモートワーク環境下では、透明性はあえて努力をしないと確保しづらいと感じています。

スクラムマスターはチームと自らの動きの透明性を確保しつつ、価値の流れをスムーズにすること、さらには検査・適応のサイクルがうまく回っているかどうかに注意を払ってください。

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