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オンライン研修の設計勘所(その2:学びを促進するストーリー展開)

| 4 min read
Author: toshio-yamaoka toshio-yamaokaの画像

これは、豆蔵デベロッパーサイトアドベントカレンダー2022第21日目の記事です。

はじめに

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前回は学習内容の構造化に関して記載いたしました。

オンライン研修の設計勘所(その1:学習内容の構造化)

今回は「学びを促進するストーリー展開」について記載いたします。

皆さんは、今までの人生で多くの時間を授業や研修に費やしてきたのではないでしょうか。

その中で、この先生の授業は理解しやすいな、この講師の研修は脳に入ってきやすいなどを感じた経験があるのではないでしょうか。

その逆パターンで、この先生の話は耳には入ってくるが全然頭に入ってこないし身にならない・成長できない。ということもあるでしょう。

ここからは、まず学びの促進に対してけしからん例を幾つか紹介した後、インストラクショナルデザインに基づく学びを促進するストーリー展開について記載していきます。

学びの促進に対してけしからん例

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学習内容に直ぐに入って話しだす

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「今から○○を学んでいきます。のみを話して直ぐに本題に入ってしまう。」

この場合、学習者にとってこらから学ぶ事柄がどの様にプラスになるのかが刷り込みされていなで学習が進んでしまい、学習への意欲が高まらず意欲的に学ぶことが難しくなります。

更に、先生と学習者間で学習ゴールが共有されていないので、何ができたらOKなのか不明なため学びが中途半端になってしまう可能性が高まります。(よくありがち)

良い先生は、今から学ぶ事柄に関して、冒頭なぜこれを学ぶのかという学習の必要性の話を入れ学習者の目的意識を高めます。

さらに、これを学ぶとどのような良い事があるのか?学習者が現状抱えている困り事や、こんな事がしたいという欲求と紐づけて学習するメリットを話します。これにより学習意欲を高めることができるのです。

また、学習ゴールを示し、そこまでの道のり(どこが険しいのか、どれぐらいのステップで到達できるのかといった行程)も示すことで学習者の頭のなかに学習マップを描かせます。

具体的な学習ゴールを示すことで、学習者自身が学習ゴールに到達できたかの判断ができるようになります。

自分の経験のみで例え話をする

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「学習者の背景を踏まずに、自分の経験のみに即して例え話をしてしまう」

この場合、学習者は例え話に興味・関心が持てなく内容を自分事と捉えられず理解を促すことができなくなります。

学習者の今までの経験や現在の業務内容を考慮した/関連する例え話を入れることで自分事として学習内容を理解することが可能となります。

テキストに書いてある内容のみに終始する

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「現在取り扱っている単元の話しに終始するのみで、学習者が今まで学んできた学習内容との紐づけや関係性を一切話さない。」

学習内容の前後の関連性が示されないと、単元単元の学習が輪切りになり記憶への定着が悪くなります。

前に学習した単元を想起させることで前単元の定着率が上がると共に、現在の単元を理解するために必要な前提知識を思い出させることができます。

話が一方的で働きかけがない

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「過去学んだ事を思い出させるための問いかけや自己判断による理解度がゴールに対してどれぐらいの達成率かといった問いかけなどがなく、一方的な情報伝達だけになってしまう。」

問いかけがない場合、学習者は疑問をあまり抱かずに学習内容に対して素直に迎合してしまい思考しない学習に陥ってしまいます。

良い学習者は自身のなかで、多角的な視点で疑問をもちそれに答える形で理解を深めていきます。

思考し理解を深めるための良質な質問を投げかけることができるかも、先生の力になります。

学習内容を話終えたあと。直ぐに終わり

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「学んだ内容の振り返り話やその単元の次レベル(発展や現場実践への転移)の話もなしに、単元を終了し次に進んでしまう。」

振り返りがない場合、目標に到達できた達成感を得られないだけでなく、学習に対して良い行動が何かわからないで次ステップへ進ため、学習の質を高めることができなくなります。また、現場実践への転移が弱くなってしまいます。

ID(インストラクショナルデザイン)をもとにした学びを促進するストーリー展開

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前述のようなけしからん先生だった場合、学習する内容・教える内容だけの学習コンテンツでは学習者の学習動機は高められず学習に失敗してしまいます。

この様な学習コンテンツでは、先生の振舞い・教え方に依存するため研修効果に大きなブレが生じてしまいます。

先生の経験則に頼らないで一定の研修効果を狙っていくには、研修の設計段階で学びを促進するストーリー展開を学習コンテンツに織り込む必要があります。

ここからは、学習者の学びに働きかけできる先生の特徴や学習者の心理を考慮した、学びを促進するストーリー展開についてインストラクショナルデザインをもとに話しを進めていきます。

インストラクショナルデザインにおいて学び促進するストーリー展開には理論があり、IT界の言葉に言い換えると「フレームワーク化」されているのです。

ここでは有名な理論であるケラーのARCSモデルとガニエの9教授事象を取り上げて説明します。

ARCSモデル

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学習意欲を高めるための手法としてARCS(アークス)モデルを紹介します。
ARCSモデルは、米国の教育心理学者 ジョン・M・ケラーが提唱した学習者の意欲を高めるためのモデルです。以下の4つの要素に沿って学習ストーリーを展開することで、魅力ある研修に仕立てることができると言われています。

Attention(注意・注目)

これから学習する内容にたいしてポジティブな印象を与え興味・関心を挽き、面白そうだなと思わせる。

Relevance(関連性)

学習者にとって身近な事柄と関連付け学習動機を高めたり、学習目標を達成した際のメリットを感じさせ、やりがいがありそうだなと思わせる。

Confidence(自信)

学習目標に対して一歩一歩近づいていることを実感できるように研修を進めたり、自身の取り組み・努力により成功(学習目標を達成)したことを感じさせ、やればできる・できたと思わせる。

Satisfaction(満足感)

学習目標を達成したことを正当に評価したり、次ステップ(応用)への道筋を示し挑戦する機会を設けるなどし、やってよかったと思わせる。

上記4つの要素を講師が振舞いとして実践するだけでなく、研修コンテンツのストーリー展開に織り交ぜることで講師の力量依存から脱却でき、研修効果を一定に保つことが可能になります。

9教授事象

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こちらは米国の教育心理学者 ロバート・M・ガニエが提唱した人の学びのプロセスに注目して研修の設計を考えるためのモデルです。

1.学習者の注意を喚起する
2.授業の目標を知らせる
3.前提条件を思い出させる
4.新しい事項を提示する
5.学習の指針を与える
6.練習の機会をつくる
7.フィードバックを与える
8.学習の成果を評価する
9.保持と転移を高める

先程のARCSモデルと比べると数が多くなり複雑だなと感じる方もいらっしゃるかもしれません。

ARCSモデルも9教授事象も学習を魅力あるものにするという意味合いでは同じなため関連性を持たせることができます。

項目 1. 2. 3. は、研修導入時の活動に対応します。ARCSモデルでは A が強く関わります。

項目 4. 5. は学習事項のインプット活動に対応します。、ARCSモデルでは R の内容が含まれています。

項目 6. 7 は、インプットした内容を練習する学習活動に対応します。ARCSモデルでは C に関連性があります。

項目 8. 9. は、学習目標を達成できたかを確かめ現場実践への道筋を示すまとめの活動に対応します。ARCSモデルでは S に関連性があります。

項目1~9に沿ってストーリーを展開することで学習者にとって魅力ある研修にすることが可能となります。

おわりに

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研修講師の経験則や力量に頼り切った学習内容の情報だけが提示された学習コンテンツでは、けしからん講師が担当した場合、学習効果を高めることができません。

それを防ぎ学習効果を高めるための考え方であるARCSモデルと9教授事象を紹介しました。

オンライン研修を念頭にした場合、

ARCSモデルや9教授事象の要素に学習者間が相互に関わる活動を入れることで、オンライン学習特有の孤独感を払拭し学習に対して前向きに取り組むことができるようになります。

今回は、ARCSモデルも9教授事象も紹介程度の説明となっております。次回以降、機会がありましたら深く触れていこうと思います。


参考文献

  1. 鈴木克明(2015) 研修設計マニュアル 人材育成のためのインストラクショナルデザイン 北大路書房
  2. 鈴木克明、市川尚、根本淳子(2016) インストラクショナルデザインの道具箱101 北大路書房

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